地域金融機関とゾンビ企業が「共倒れ」となる恐れも
遠藤氏の地方行脚は、地域金融機関の経営に不安を覚えている背景もあったはずだ。金融庁は地域金融機関が経営統合を検討する場合、地域における事業の寡占状態を制限する、独占禁止法の適用除外を盛り込んだ特例法案を準備している。
長崎県でふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の統合が公正取引委員会との調整で難航したことから、地方金融機関が合併に二の足を踏む可能性を下げる狙いがあるという。図らずも「コロナ禍」による景況感の悪化で今後、活用を検討する金融機関は増えそうだ。
金融円滑化法が最初に施行されたリーマン・ショック当時より、金融機関の経営環境は厳しさを増している。経営体力差は地域のトップ銀行と、それ以外とで格差が広がっており、融資先に対する目利き力も同様だ。金融円滑化法の復活が、より体力が乏しく目利き力のない地域金融機関と、地場のゾンビ企業との「共倒れ」を招くことにならないか。
ある地域金融機関トップは言う。
「金融円滑化法が前回、施行された際は企業を残すことに力を入れた。だが今は企業本体ではなく、企業が持つ技術と雇用をいかに守るかが課題となる。そのためには、資金需要がひっ迫している企業の難局が慢性的ではなく、コロナ禍によるものだと見極める目利き力と、事業承継やM&Aなどに、どれだけわれわれが貢献できるかがカギになる」
地域金融機関のすべてが、その通りにできればよいのだが。