蒸留器も熟成庫も見応えたっぷり

特にバラエティに富んでいるのが蒸留器です。

形状は団子を二つ重ねたようなバルジ型に、胴体部分にふくらみがないストレート型、胴体からネックにかけてふくらみがあるランタン型に大別されますが、大きさやシルエット、蒸留器と冷却器をつなぐラインアームの角度の違いを加えれば、まさに無限のバリエーションがあります。さらに、蒸留所ごと、さらには一基ごとに色合いが異なります。これは経年変化する銅製ならではです。近年はジンもつくる蒸留所が増えているため、ジン用の蒸留器も加わって実験室さながらの様子を呈しているところもあります。

土屋守『ビジネス教養としてのウイスキー なぜ今、高級ウイスキーが2億円で売れるのか』(KADOKAWA)
土屋守『ビジネス教養としてのウイスキー なぜ今、高級ウイスキーが2億円で売れるのか』(KADOKAWA)

ウイスキーの原酒が眠る熟成庫も見どころ満載です。樽に細かな規制がありオーク樽以外は使えないスコットランドと違い、日本であれば、桜や栗、杉などの樽を見かけることもあります。樽の鏡(両サイドの円形の板)の刻印を見ながら、「これはアメリカでバーボンの熟成に使われた樽だ」「こっちはスペインのシェリーが詰められていた」と、樽の履歴に思いを馳せるのも楽しいものです。薄暗く、ひんやりとした熟成庫に漂う木とウイスキーの香り。樽の森のなかに入り込むと不思議と心が静まります。

穀物の糖化、発酵、蒸留、熟成と、酒づくりに必要な工程をひととおり見ることができるのも、ウイスキーの蒸留所見学の魅力と言えるでしょう。通年、稼働させている蒸留所が多く、見学の時期を選ばない点も観光向きです。

47都道府県すべてに蒸留所がある未来

すでにお話ししたように、スコットランドでは、スコットランド国立博物館とエディンバラ城に次いで、スコッチウイスキーの蒸留所が人気の観光名所となっています。日本でもやがて、ウイスキー蒸留所が人気の観光名所となるかもしれません。

また、ウイスキー蒸留所は、農業や林業といった地元産業にも大きく貢献します。ウイスキーの原料は穀物です。発酵槽や熟成樽には木材が使われます。ウイスキー産業は農業および林業との親和性が非常に高いのです。実際、地元の農家さんに依頼して大麦を栽培してもらったり、地元の木材で発酵槽や熟成樽をつくったりという試みが、いくつかの蒸留所で行われています。

現在のペースでいけば、47都道府県にウイスキー蒸留所が必ず一つはある、そんな日が来る可能性は大いにあります。そうなったとき、日本がさらに活気づいていくことは間違いないでしょう。それも地方を活性化し、地方から発信する経済効果です。

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