「ウイスキーの素晴らしさを知ってほしい」

ガイアフローの創業者である中村大航さんは、もとは祖父が興した精密部品製造会社の代表を務めていました。ところが、ウイスキー好きが高じてウイスキーを輸入するインポーターに転身。その後、静岡蒸溜所を開設したという異色の経歴の持ち主です。中村さんは見学を前提として設計した理由について、「いちウイスキーファンとして多くの蒸留所を見学し、ウイスキーの世界に触れてきました。だからこそ、自分たちの蒸留所も多くの人に見ていただきたいし、その体験を通じてウイスキーの素晴らしさを知ってほしいんです」と語ります。

ウイスキー蒸留所の魅力は「多様性」

「ウイスキーの蒸留所を見て、一体、何が面白いの?」

ウイスキー蒸留所を一度も訪れたことがない人は、不思議に思われるかもしれません。では、ウイスキー蒸留所の魅力とは何か。人によってさまざまな答えがあると思いますが、私は「多様性」こそが最大の魅力ではないかと考えています。

私は新潟県佐渡島の出身です。新潟県は酒蔵の数が日本一。現在、89の酒蔵があり、日本酒消費量も日本一を毎年競っています。新潟清酒名誉大使に任命いただいているご縁もあり、何度も酒蔵見学をさせていただいていますが、酒づくりの工程や設備は、どこもそれほど変わらないという印象を受けました。もちろん、規模の大小はありますし、古い酒蔵にはなんとも言えない趣おもむきがあります。

ただ、日本酒の製造工程のかなめとも言える麹室こうじむろは、麹菌を成長・増殖させる非常にデリケートなエリアなので、取材などの特別な場合を除いて基本的に見学ができません。また、仕込みの時期は11月から3月に集中していて、それ以外の期間は、見学できたとしても設備を見るだけとなります。

対してウイスキーは、ひいき目もあることを承知のうえで言えば、蒸留所の設備も製法もとても多彩です。原料の穀物を発酵させる発酵槽一つとっても、ステンレス製もあれば木製もあり、木製はさらにオレゴンパイン材やミズナラ材があります。