また湾岸タワマンは中国をはじめアジア系の投資家が多く所有していることでも有名だ。彼ら投資家たちは、世界中の不動産のみならず、株式、債券など多くの金融資産を持っている。東京五輪開催による五輪レガシーによる値上がりを見込んで東京湾岸のタワマンを購入している投資家も多い。ところが、五輪レガシーどころか本当に開催されるのかも危うい状況になり、金融商品でも多額の損失を計上するにいたって、資産処分に走る可能性も大いに考えられる。
タワマンの欠点はこうしたマーケット下落局面になると、同じ棟からたくさんの住戸が一斉に売りに出されることだ。一時に多くの「売り住戸」が出てしまうということは、価格の維持が難しくなることを意味する。早く売りたい売主同士が疑心暗鬼に駆られて売り急ぐ。そして一人でもマーケットを無視した超安値で売り抜けを図ると、それが呼び水となってさらに価格が下がる悪循環に陥りやすいのだ。
テレワーク浸透でタワマンの価値も変わる
そもそも今回のコロナ禍で多くの企業が図らずも体験したのがテレワークだ。機械やソフトの使い方がわからないという初歩的な問題も喧伝されたが、実は多くの企業で意外にもテレワークで仕事ができてしまうことに気づかされたはずだ。またひとつのオフィスに全社員を「密集」「密閉」して「密接」な仕事をさせることのリスクを実感した企業も多かったと聞く。今後、都心オフィスはヘッドクォーターだけにして、テレワーク中心の勤務体系に移行する企業が増えてくれば、これまでの「会社まで直通40分」だの「駅徒歩5分以内」などといっていた「会社ファースト」の住宅選びにも変化が生じてくるかもしれない。
住宅に対する価値観の大変革だ。そんな環境変化が生じた場合、果たして三密空間であることに加えて地震や津波、台風による水害の危機までが懸念される湾岸タワマンの資産価値は維持されるのだろうか。コロナ禍は湾岸タワマンマーケットを大きく揺さぶるとんでもないものである可能性も否定できないのである。