在宅勤務で持ち帰りサービスは好調
ファストフードの業種は、お昼時や夜などに都内の店に立ち寄ってみると、普段どおりにぎわっています。これらは、日常食を低価格で提供しており、もともと団体客ではなく、一人または少人数で入るタイプのレストラン。従って、観光地を除き影響は少ないようです。
政府は、2月25日に新型コロナウイルス対策の基本方針を発表。企業に対して、テレワークや時差出勤の推進を呼びかけ、多くの企業で在宅勤務が導入されました。ファストフード業界は、持ち帰りサービスを当初より導入しており、在宅勤務者の需要をうまく取り込むための施策を実施、この向かい風に対抗しています。
例えば、「牛めし」を中心とした定食店を展開する松屋フーズホールディングスでは、2月の売り上げは前年比117%と上振れで直近まで好調。3月24日より期間限定で“みんなの食卓応援団お持ち帰りワンコインフェア”を開催。テークアウトの場合に限り、人気の定食をワンコインでの提供を開始しています。
マクドナルドでは、新型コロナウイルス対策として一部の店舗において営業時間変更や休業を発表しているものの、2月は前年同月比で売り上げが115%、3月11日より「非接触デリバリーサービス」を開始しています。これはWebまたはアプリで注文し、該当サービスを希望すると、配達員が玄関先に商品を置き、玄関先から2メートル離れた距離から顧客の商品受け取りを確認するという徹底したものです。加えて、当初よりウーバーイーツも活用しています。元々19年10月の消費増税以降、イートインの税率が10%に上がったのに対し、テークアウトは軽減税率8%に据え置かれていることも追い風です。
影響が大きい居酒屋・海外展開企業
一方で、仕事帰りなど団体客でにぎわう居酒屋は大きく客足を減らしています。この業種では通常3~4月は歓送迎会による繁忙期であり、本来は稼ぎ時です。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務が推奨され送別会などのイベントの自粛が要請されています。その結果、居酒屋では売り上げが半減しているとも言われています。
実際、筆者知人が経営する居酒屋チェーンでは、2月に対して3月は売り上げの約80%も減少している店舗があります。大手居酒屋チェーン店のうち多角化をあまり行っていないチムニーや大庄では、コロナの影響や対応策について、3月26日現在特段の公表はしていないことから、具体的な対応策に苦慮していることがうかがえます。大庄における2月の業績速報値上の売り上げは前年比94%と微減し始め、3月の影響はより大きくなることが予想されます。
居酒屋は、座席数も多く広いテナント、かつ、人が集まる駅前への出店も多いことから、家賃などの固定費が高く、売り上げが減少すると赤字に陥り易い傾向があります。帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査(19年)」によると、リーマンショック以降、飲食店の倒産件数のトップは酒場・ビヤホールの業種であり、他社との競争・景気影響を受けやすい業種です。
海外展開企業も危機にさらされています。低価格イタリアンファミリーレストランのサイゼリヤは、中国展開に力を入れていたため、大打撃を受けています。上海、広州、北京に約330店舗展を開していますが、その大半が休業となっています。営業利益の約45%を海外事業が稼ぎ出していたため、業績全体への影響が懸念されます。