シンガポールの4段階警戒レベル
中国・武漢市に端を発した新型コロナウイルスは世界に感染が拡大し続け、感染者の数は急激に増加しています。シンガポールでもそれは例外でなく、人口約570万人のシンガポールでは、2020年4月4日の段階で累計感染者数は1189人となり、1000人を超えました。ただ、感染者数に対して死者はわずか6人となっており、、医療水準が高いレベルであるということもあるでしょうが、シンガポールの致死率は世界保健機関(WHO)が2%程度としている基準と比べても低くなっています。
その背景には、02年から03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)での苦い経験があると言われています。シンガポールではSARSによって33名の死者を出し、市民生活にも大きな影響を与えました。その教訓から今回の新型コロナウイルスの流行では、先手先手で感染拡大防止策を講じています。
筆者はシンガポールで生活をしながらライターをしていますが、メディアやSNSを通じて知りうる日本との対応の違いをいくつかの視点から論じたいと思います。
※この記事が公開された7日から、シンガポールでも外出自粛措置が始まりましたが、クアラルンプール(マレーシア)やバンコク(タイ)といった近隣都市のように外出が禁止された訳ではなく、外出をできる限り控えるようにというあくまで要請レベルに留まっています。
まず触れたいのは、国のトップがメッセージを発信するタイミングとその内容について、です。
シンガポールには4段階の感染症の警戒レベル(DORSCON)があり、2月7日には上から2番目の「オレンジ」に引き上げました。これを受けて、スーパーなどでは買いだめに走る一部の国民の姿も見られましたが、リー・シェンロン首相はすぐに国民向けビデオメッセージを発表。「恐れはウイルス以上の害をなす可能性がある。マスクの買い占めや根拠のない噂の流布などは人をパニックに陥らせ、事態を悪化させかねない」と平常心を求めました。