開店まで「5時間待ち」しないとマスクは手に入らない⁉
3月中旬のまだ肌寒い頃、関東近郊に住む田中弥生さん(仮名・30代)は、早朝の駅前で、がっくり肩を落としていた。
前日に、駅前の大手スーパーマーケット店でマスクが150個販売されるとの案内を見かけ、「もしかして買えるかも」と期待して、朝7時に家を出てきた。だが、10時開店前に店に到着したとき、すでに長蛇の列。しかも150枚の整理券の配布は7時には終わっていた。警備員によれば早い人は朝5時から並んでいたそうだ。
「開店まで5時間待ち。そんな早くから並ばないと、マスク1個も買えないなんて……」
ある程度、予想はしていたものの、これほどとは思っていなかった弥生さんは絶句した。
コロナで非正規雇用の世帯の収入がさらに減ったら……
弥生さんは、小学生の子どもと2人で暮らすシングルマザーだ。近くの介護施設で契約社員として働いており、年収は350万円ほど。生活はカツカツだ。
この日はたまたま運よく、午前中休めたので、並ぶことができたのだが、平日は仕事や家事、育児に追われる毎日。週末もたまった家事や用事を済ませるのに手いっぱいで、マスク探しに奔走する時間も体力もない。
それならばと、ネットで、マスクを検索すると、「入荷に数週間から1カ月」や、在庫があっても「50枚入り3000~4000円」というモノばかり。
弥生さんは、仕事柄マスクは必須アイテム。本来は、1日2枚は必要なのだが、在庫が残りわずかになってきた最近では、1枚でしのいでいる。
「ほんの数カ月前まで、近所の量販店で、1枚25円から30円くらい、50枚入り1500円程度で買えていたのに……。私にとって、マスクは必需品。とはいえ、子どもの小学校が休校になって、食費や光熱費、家庭学習用の教材費なんかもバカになりません。必要なものとはいえ、できるだけ安く買いたいんです」
しかも、弥生さんが勤務する介護施設から、新型コロナの感染者が出ようものなら、施設閉鎖の可能性もある。自宅待機で働けなくなれば、非正規雇用の弥生さんの家計は、一気に困窮してしまうだろう。