今、困っているのは「時間」も「お金」もない人

この弥生さんと同じく、マスクを買い求めて大手スーパーに並んでいたのは、スーツ姿のビジネスパーソンや子連れの主婦、高齢者、学生など、さまざまな年代や属性の人だった。

今や、どの家庭でもマスク不足が深刻ということだろうが、ドラッグストアで働く知人に聞くと、毎朝並んでいるのは高齢者や主婦層が多いという。

実は「お金」と「時間」は密接な関係にある。お金のない人は、時間をかけて安いマスクや食料品を探し求めて、お金を節約しようとする。逆に時間のない人は、割高な商品で躊躇ちゅうちょなく購入して時間を節約する。

後述するが、弥生さんのように、「働かなくては食べていけない」「収入や預貯金も多くない」といった時間もお金もない大多数の国民が、今回のような不測の事態に陥った場合に、最も家計に影響が出る可能性が高い。

一方で、年金収入など毎月決まった収入があり、時間にも余裕のある高齢者は、「時間」も「お金」もある人の代表格だといえる。

もちろん、高齢者といえども、公的年金だけで生活できず、働いて収入を得ている方も少なくないし、時間やお金があっても、体力的に買い物に出られない方など、一様でないことは承知の上と前置きしておきたい。

いずれにせよ、今回の新型コロナのような予期せぬ事態に急に見舞われた場合、必要な品を探し求める時間があったり、それらをある程度、備蓄できたりする、時間とお金のある人あるいはやりくりできる余裕のある人は、マスク入手のために苦しまなくてもよいのだ。

新型コロナの影響で家計が壊滅しかねない3つの家計とは?

時間もお金もない人が困っている可能性が高いが、具体的にどんな世帯が影響を受けやすいか考えてみよう。主に以下の3つのパターンが予想される。

その1:非正規雇用でマンパワーが不足するひとり親家庭

厚生労働省の調査(※)によると、シングルファーザーの場合、正規雇用が圧倒的に多い。父子家庭の場合、正規雇用87.1%(平均年収約426万円)、非正規雇用12.9%(同175万円)だった。

※厚生労働省「ひとり親家庭等の現状について」(平成27年4月20日)

一方、同じひとり親であっても、前出の弥生さんのように、子どもと母親からなるシングルマザー家庭は、非正規雇用の割合も高く、家計を持続させる体力が脆弱ぜいじゃくだ。

同省の調査では、母子家庭の場合、正規雇用43%(同約270万円)、非正規雇用57%(同約125万円)となっている。正規雇用就業率・収入いずれも母子家庭のほうが低い水準であることが歴然だ。今後、会社から自宅待機するように要請があり、その影響で収入が減るようなことがあれば、たちまち家計は火のクルマ、もしくは破綻するリスクもある。