高校受験でトップ校を狙う方法もある。発達に合わせた決断が大事
勉強しろしろ、とうるさく言ってプレッシャーを与え「子供を潰す」ほどではないにしろ、問題ありの親も多い。
例えば、学習計画やスケジュール管理をすべてやる親だ。よかれと思って手を出すこうした親だと子供は指示がないと動けない子になってしまう傾向があるという。
「中高一貫校の先生の話では、中学1年生の夏休み後に伸びていく子と低迷する子に分かれるそうです。その差は、受験の時に自分で勉強してきたかどうか。最初は親が学習計画を立てたとしても、徐々に本人に任せていきましょう」(矢野さん)
とはいえ、実際は「自ら計画し、大量の勉強をこなす」ができる子はかなり限られる、と教育コンサルタントの松永暢史さんは言う。
「4年生時点で、賢くて精神年齢も高い子ならば、できるかもしれません。でも、成長がのんびりした子供は難しい。私は多くの親子の学習相談を受けてきましたが、成長に合わない促成栽培的な受験勉強をさせられて、ダメになった子をたくさん見てきました。親や塾ががんばって、実力にあわない進学校に合格させてしまった場合、入学後についていけなくなる可能性が高いです。忘れてはいけないのは、勉強はずっと続くということ。中学受験は見送り、高校受験でトップ校を狙う方法もあるので、発達に合わせた進路を選びましょう(『プレジデントFamily2020年春号』参照)」
1年間の塾通いで合格できる学校に入れる「ゆる受験」という選択肢も
無理して受験させるのはよくない。だが、わが子が精神的に幼いタイプでも、地元の公立中学校が荒れているようなケースでは、やはり中学受験をさせたいという親も多いだろう。
そこで松永さんが提案するのは「ゆる受験」だ。
「小学6年生からの塾通いで、合格できる私立の中高一貫校を受験させるのです。これなら成長がのんびりな子も、受験勉強の弊害を最小限に抑えることができます」(松永さん)
塾に1年しか通わないということは、不完全な準備で中学受験に挑むということだ。4年生から塾通いしている子には、学力的にはかなわないだろう。4年生から塾通いをしている子たちは偏差値60の学校を受験するなら、偏差値40台、あるいは30台の学校を受けることになるかもしれない。それでも、発達に合わない受験勉強をさせて勉強ギライにしたり、中学校以降に学ぶ意欲をそいでしまったりするより、“後伸び”するエネルギーを温存できるからよいという。
「中学受験は、長い人生で見れば、あくまで通過点。余力を残しておけば、大学受験でいいところを狙うこともできます」(松永さん)
「ゆる受験」をするにしろ、王道の中学受験をするにしろ、学校選びには「子供の意思を反映してほしい」というのは、私立の雄・武蔵高等学校中学校の杉山剛士校長だ。
「入学後に伸びない子には、親が選んだ学校に行かされた子が多い。そういう子は学習意欲がわかず、やがて、うまくいかないのはすべて親のせいだと思うようになります。そうさせないためにも、最終的な学校選択は子供にさせましょう。誘導するのはOKです。行かせたい学校があったら、説明会や見学に何度か誘って連れていってみる。でも、本人に響かなかったら、やめる。何よりも子供の意思を大事にしてください」