あとでラクをさせたいと大学付属校を受験させてはいけない

「大学進学でラクさせたい。高校受験の選択肢が少ないからといった理由で、中学受験をするんだったら、やめたほうがいいですよ」

取材を始めた筆者がいきなりダメ出しされたのは、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」の代表・矢野耕平さんだ。「それらの理由は、いずれもネガティブですよね。そうではなく、中学受験に挑戦するなら前向きな理由ですべきです」という。

『プレジデントFamily』2020春号の特集は「受験大混乱! わが子がトクする進路」。子供のタイプ別に適した進学コースを解説

では中学受験をする、前向きな理由とは何だろうか。矢野さんはこう話す。

「受験を通じて、一生ものの『教養』と『学習習慣』が身に付くことです。中学受験では国・算・理・社をバランスよく学びます。その内容は小学校で習うレベルをはるかに超えて、高校レベルも扱います。深く広く勉強をした小学生は、見える景色が変わるのです」

入試では時事問題が出題されるので、ニュースにも詳しくなり、大人顔負けの視点や疑問点を持つようになる。さらに、中学受験で学んだ理科・社会の知識は、大学受験にも生きてくるため、大きなアドバンテージになるという。

「知的好奇心を刺激してくれる塾に出合うと、学びに目覚めます。その中で、自分で学習する習慣がついた子は、中学以降も伸びていきます」(矢野さん)

中学受験の利点は、「教養」と「学習習慣」が身につくこと

そうして入学する中高一貫校では、同様に入試を突破した学力の高い生徒に対し、6年間をうまく使い指導するカリキュラムが組まれている。

「優れた大学進学実績を出す学校は、高校までの内容を5年間で終えて、残りの1年間を大学受験対策にあてています。また、大学付属校なら、受験勉強に時間を取られることなく、興味のある研究や部活、習い事に没頭することもできます」(矢野さん)

私立は英語4技能を身につけるための授業や留学制度が充実しているなど、グローバル化への対応も整っている学校も多い。親は、勉強や英語力は学校に任せて、課外活動など子供の個性や強みを伸ばす活動をバックアップすることで、高い英語力や高校までの課外活動の充実度が問われる海外大学進学も視野に入れられる。それだけ選択肢が増えるのだ。