リモートワークは人間関係などの問題をあぶり出す

ここまで述べてきたように、リモートワークが円滑に進められるかどうかは、ツールをうまく活用すること以上に、どのようにして相手と信頼関係を構築していくかにかかっている。

同じオフィスで働いていた者どうしであれば「一定の信頼関係を築いている」と安直に考えがちだ。しかし、いざ互いに離れて業務にあたってみると、想像以上に噛み合わない場面に遭遇することがある。他の人とはメールやビデオチャットでうまく業務が進められるのに、この人とは同じ方法でやり取りしても噛み合わないな……と感じることもあるだろう。

要するに、リモートワークは「実は信頼関係が築けていなかった」「業務に関連するコミュニケーションに潜在的な問題があった」ことがあぶり出されやすい働き方なのである。

リモートワークを円滑にするメール術

それでは最後に、リモートワークを円滑に進めるためのポイントを列挙していこう。全部で7項目だ。以下の事柄を実践できれば、信頼関係を深められ、成果物の質を高めることができるに違いない。

【1】メールの返信、修正対応はすぐにする

一時期「メールの返信をしないのがカッコイイ」的な文化が主にクリエーター界隈の先端的な方々の一部で流行っていたが、これは大多数の労働者にとって非常に煩わしく、迷惑な姿勢である。仕事なのだからレスはできるだけ早くするべきだし、アウトプットの修正を依頼されたら可能なかぎり即時対応するべきである。相手はあなたの反応を待っていることを忘れてはならない。

【2】関係のない人はメールの宛先から外す

つい心配になって関係者全員を宛先に入れてしまいがちだが、結局、以降のメールでやり取りするのは2~3人程度……なんてケースは多い。ならば余計な人に無駄なメールを送る必要はない。本当に必要な人だけでやり取りをすることにより、妙な忖度も働かなくなり、業務の遂行に集中できる。

【3】そっけない文章は書かないようにする

この項目は否定する人もいるだろう。「ビジネスメールなのだから、要件だけを端的に伝えればよい」「『相手がどう思うか』に配慮するなんて時間の無駄。いちいち気にしていたら文面が仕上がらない」といった反論が来そうだ。

だが「修正した原稿はいつ送っていただけるのですか? こちらは以降の対応ができず、困っています」などとつっけんどんなメールが来ると、受け手は萎えてしまう。シビアな状況や怒りを伝えるには、そうした文面でも効果はあるだろう。しかし、双方の怒りやいら立ちがぶつかり合うようになると、その業務へのモチベーションは劇的に低下し、結局、案件全体の品質が下がってしまう。

私の仕事相手にも、実際に会うと非常に感じがいいのに、メールの文章があまりにもそっけなく、いつも「怒っているのだろうか」とこちらを不安にさせる人がいた。実際のところ、その人は怒っているわけではなく、自分では普通の文面だと思っていたようなのだが、受け取る側はメールが届くたびに戦々恐々だった。

たとえば上記のような内容のメールであれば、「修正版の原稿、いつ頃お送りいただけそうでしょうか? 拝読するのを楽しみにしておりますので、なにとぞお願いします! スケジュール的には……ちょっとヤバいです(笑)」といった調子で綴ると、まったく印象は変わる。

「面倒くせぇ。そんな配慮いらねーよ」と言いたくなる向きもあるだろうが、相手の顔が直に見られないリモートワークでは、ちょっとした配慮を怠ると、途端に齟齬が生じることがある。