(4)契約書をつくる

重要な契約には文書化された契約書が必要だ。なされた合意が正式な文書にきちんと反映されていなければ、巧みな交渉によって獲得したものが無に帰すことになる。

契約書作成の技術的側面はけっして華やかではないが、多くの戦いはそこで勝敗が決まる。疲労困憊していたとしても、文書化する作業は相手側にまかせたいという誘惑に屈してはならない。最初からあなたの側の弁護士や専門家に作成させるほうが、後になって相手がつくった草案を書き直すとき彼らの助けを求めるより賢明だ。自分の側の弁護士は自分の指揮下にあるのだから、彼らに対しては、自分たちがどのようなリスクを取る用意があり、どこで保護を必要とするかを率直に伝えることができる。

ビジネスでも人生でも確実なことはほとんどないのだから、現実問題としては、一部の項目は未解決のままにしておいたり、あいまいなままにしておいたりするほうが賢明なことがある。

退屈な技術的ポイントについては長々と議論するのではなく、包括的にそれに対処することを考えよう。誰もが契約に乗り気になっている間にお定まりの紛争解決条項を作成しておけば、予期せぬ問題が生じた場合のコストを減らし、訴訟を防ぐことができる。

交渉の最後には、更新のオプションなどを定めたお決まりの条項を盛り込もう。これらの条項は契約締結を促したり阻んだりするものには見えないだろうが、契約更改の時期が来たとき誰が主導権を握っているかを決定する。契約書を作成するときは、当事者はえてして当面の金額に関心を奪われるが、長期的には契約を延長するか打ち切るかを決める権利のほうがはるかに大きな金銭的価値を持っている。

最後に、「合意覚書」や「購買合意書」に軽い気持ちでサインしないようとくに注意しよう。これらの文書は本格的なコミットメントを要求し、あなたがそれ以上の利益を勝ち取るのを難しくして、すでに交渉が始まっていることに気づきもしないうちに交渉を終わらせてしまうことがある。

(5)相手の顔を立てる

最初から相手にあまり好感が持てず、長い交渉のあとでさらに好感が持てなくなっていることがある。そのような状況で礼儀正しくするのは容易ではないが、心遣いは仕上げの段階で最も重要になる。

契約が承認されるためには、相手が社内で面目を保てるようにしてやる必要があるかもしれない。これは単なる美徳の問題ではない。面目を失ったら、相手は報復したいという気持ちにかられ、本来なら受け入れるべき契約をはねつけるかもしれない。誰かの合意が不承不承のものだったら、その人物に約束を果たさせようとしてもがっかりするだけだろう。

(翻訳=ディプロマット)