隠れ負債を探せる便利な窓口
一方で、隠れ負債の有無についても、できるだけ早く確認しておきたい。前述したように相続放棄するなら、亡くなってから3カ月しか猶予がないうえに、マイナスの遺産がどのくらいあるのかがわからなければ、相続放棄すべきかどうかも決められないからだ。
そして、金融機関からの借金を調べるのであれば、役立つ方法がある。「銀行なら全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センター、クレジット会社ならCIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)、消費者金融ならJICC(日本信用情報機構)といった窓口があって、相続人が請求の手続きをすれば被相続人の負債の情報を入手することができます」と鈴木さんはいう。
ただし、個人からの借金などは調べられない。家の整理のとき、借用書などがないかどうかをよく探してみよう。それでも借金の有無がはっきりしない場合、限定承認という方法がある。簡単にいえば、「プラスの遺産を上限として、マイナスの遺産を承継する」という手続きで、もし後で被相続人の多額の借金が発覚しても、相続人が過大な負債を抱える心配はなくなる。
最後に土地を相続する場合は、今後、相続登記の手続きが義務化されることに要注意。これまでは、登記をしなくても罰則がなかったことから、登記費用や手間を惜しんだりして相続登記を怠るケースが後を絶たなかった。その結果、代が替わるたびに法定相続人の間で所有権が細分化され、所有者がはっきりしない土地が増加してしまった。
「そのため法制審議会の所有者不明土地対策案では、相続登記の手続きを簡素化する半面、一定期間内に登記しない場合の罰則などを盛り込む方向で動いています。土地を相続したら、相続登記の手続きも速やかに済ませておきましょう」と鈴木さんは話す。
とにもかくにも近親者が亡くなった後には、行わなければいけない面倒な手続きがうんざりするほどある。一連の手続きの全体像を把握したうえで、必要となる書類についても手続きが滞りなく行えるように事前に準備し、期限が決められたものについてはその期限までに確実に済ませていこう。
夢相続代表取締役
相続実務士。1987年、相続コーディネート業を開始。相続実務士の創始者として、1万4500件以上の相続相談に対処。『変わる相続』など著書多数。
鈴木敏弘(すずき・としひろ)
東京国際司法書士事務所代表司法書士
大学卒業後、大手メーカーに勤務。司法書士を目指して脱サラ。これまで1000人以上の相続・債務整理問題を解決してきた。