故人がインターネットやスマートフォンを利用していた場合、プロバイダーやアプリの解約手続きも必要になる。しかし、ネット関係の料金は電子決済で、書類での手がかりがないケースも多い。「エンディングノートなどを活用して近親者がわかるように、使っているプロバイダーやパスワードを手帳などに書きとめるよう、生前に頼んでおきましょう」と曽根さんはいう。
マイナスの遺産が隠されていることだってある
故人の遺言書や遺産を調査し、「限定承認」や「相続放棄」を決めるのは、相続を知ってから3カ月以内と定められている。相続する遺産には、預貯金や株、不動産といったプラスの遺産だけでなく、借金や滞納している税金といったマイナスの遺産が隠されていることだってある。
もしも、プラスの遺産よりもマイナスの遺産のほうが大幅に上回っていたら、想定外の「負の遺産」を背負い込むことになる。それだけに故人の負債の状況を念入りに調べる必要があり、この点については、限定承認の仕組みを含めて後で解説する。そして調査に時間がかかるようなら、「相続の承認または放棄の期間の伸長」を家庭裁判所に申請しておく。これら8つ目の手続きを甘く見ないほうがよい。
故人が年金や不動産の地代、株の配当といった収入を得ていた場合、相続人などが代わりに所得税の申告をする「準確定申告」という9つ目の面倒な手続きが必要になる。計算期間は1月1日から故人の死亡日までで、相続を知った日の翌日から4カ月以内に申告しなければならないので要注意だ。
次に、被相続人(故人)の遺産を相続して相続税がかかるのであれば、被相続人の死亡後10カ月以内に相続税の申告を行い、納付しなければならない。その際に相続権のある人が複数いて、遺言書がない場合は、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を事前に行い、分け方を決めた「遺産分割協議書」を作成する。万が一、協議が紛糾して決まらないときは、民法上の法定相続分に従って遺産を相続したものと仮定して、各相続人の負担税額を計算する。
そうした過程で行うのが預貯金の解約や名義変更で、「相続人全員の署名・捺印とともに、全員の戸籍謄本や印鑑証明などが必要になります」と鈴木さんは指摘する。これが意外と厄介で、最後10番目の面倒な手続きとなる。相続した不動産の相続登記の手続きについては、プロの司法書士に任せるのがベターだ。先の相続税の負担税額の計算や申告についても同様である。