その担当者が変な人だったら、頼りない人だったら……と心配するかもしれませんが、今はコンプライアンスが厳しくて方々からチェックも入るし、おかしなことをする担当者はクビになります。今の若い担当者はきちんとしているし、キャリアアップのために頑張っているから、変な人がいるのはむしろ上のほう。若い人には逆にいません。
腹の探り合いなどせずにストレートにきく
こうなった背景は、働き方改革など様々ですが、営業活動自体を貴重な資産と見なすのが現在の風潮。時間をかけて人間関係を築き、3年かけて1つ仕事を取るというより、たとえばクラウドコンピューティングによる顧客管理の仕組みを導入するなどして、営業のプロセスをできるだけ見える化し、効率化する方向にあるのです。古き良き時代の武勇伝を持つ人たちにとっては、すごく居心地が悪いけれど、「思ったより考えなくてもできるんですね」と、営業が好きになる若手も少なくありません。時代がいい方向に向かっているということだと思います。
ただ、一方で営業が難しくなった側面はあります。「いろいろ検討した結果、今回の件については他社に決めました」「申し訳ありません。また機会があったらお願いします」などと、丁寧に会って気持ち良く帰す話し方がテンプレート化されているから、先方の本当の状況がわからない。本音ベースを知ることが非常に重要で、そこがわからぬまま動いても無駄になります。
そこで問われるのは、質問力です。質問力とは、腹の探り合いなどせずにストレートにきくこと。担当者にできるだけ明確な質問を投げかけて、回答してもらって本当のことを知る。これを徹底することが大事です。担当者は、質問されることは嫌じゃないんです。質問を遠慮する人には、「僕らのことをわかってない、きいてくれない」と見なされ、発注されません。逆に一番嫌われるのは、話をきかずに一方的に話す人です。
唯一接触する担当者とは、連帯感を持つことが重要になってきます。こちらの提案がよいものだと納得できても、社内にはいろんな予算も優先順位もあるからそのまま通るわけではないことは、担当者も承知しています。だからこそ「今回の案件を通すため、一緒に頑張っていきましょう」という姿勢を示すんです。
そのためにも、天気とか野球とか余計な雑談抜きで、「あなたの悩みは何ですか?」とストレートにきく。仕事上の悩みは誰でも持っています。それをきいてあげるんです。初対面でも、「こいつ仕事やってないな」と思われるのは嫌だから(笑)、「まあ、それなりには……」とか何とか答えますよ。そこから切り込むんです。普段巡回する業界はそう変わりませんから、悩むポイントは想定できると思います。それを次々とぶつけて、「それと会社はどう繋がりがあるんですか?」「組織の中に何かありますか?」という具合にチャンスにしていくんです。「ない」という回答は、「おまえには話したくない」という意味なので望み薄でしょう。