「タイムカード」を見たことがない

ふつう、会社員が朝出勤して最初に行うことは、タイムカードへの打刻だと思います。物理的にタイムカードがない企業でも、個人のパソコンのログイン時間などの方法で、出勤時間と退勤時間を記録していると思います。その記録は、勤務時間の把握や残業代の計算に当てられ、管理職による労務管理の大事な資料になっていると思います。

ここまで「思います」としたのは、実は教員である私は「タイムカード」を見たことがないからです。これは、私が勤務してきた学校が特殊だったということではありません。少なくとも最近まで、タイムカードのある公立学校はほとんど存在していませんでした。

教師は勤務時間をどのように管理しているのでしょうか。それは、「押印」です。職員室には出勤簿という冊子がおかれており、朝にはその日のページが開いた状態になっています。それぞれの先生は、毎朝出勤したらそこにすぐに印鑑を押すだけです。退勤の時は、特に手続きはありません。

何時間働いているのかがわからない

この手続きで分かるのは、「その日〇〇先生が学校にきたのかどうか」ということだけです。朝何時何分に出勤してきたか、また何時に退勤したのか把握するツールがないのです。極端なことを言えば、遅刻して定時に退勤した教師と、早朝から部活の朝練で出勤し、夜中まで担当する行事の準備で残っていた教師との間に、書類上違いが記録されていないことになります。

さらに言うと、学校によっては「押印」すら行っていないことが分かっています。平成28年に実施された教員勤務実態調査によると、小学校では35%、中学校では46%の学校で、出勤の確認は「目視・報告・点呼」のみとなっています。記録として出勤の状況が残ってすらいないのです。

ですから、もし過労死などの重大な災害が起こった場合、教師の勤務時間を客観的に証明することが難しい状況で教師は働いていることになります。