残業代がないから、労働時間を測る必要がない
なぜ、タイムカードがない学校ばかりなのでしょうか。一言でいうと、公立学校の教師には残業代がないからです。
普通、所定の勤務時間を超えて働く場合には、時間外労働手当(残業代)が発生します。給与額を時間換算で1.25倍(深夜の場合は1.5倍)にあたる額を支払うもので、当然公務員にも適用されます。ですが、公立学校の教員にはあてはまりません。
これは、通称「給特法」という法律に基づいています。ごく簡単にいうと、教師の仕事の特殊性に鑑みて、給与総額の4%にあたる教職調整額を上乗せする、その代わり時間外手当を支払わない、というものです。これは、1週間あたり2時間程度、月に8時間程度の時間外労働分に相当します。
中学校の先生の半数は過労死ライン超え
給与を4%多くもらえる、とだけ書かれると、なんだか得をしているように感じられるかもしれません。ただしその一方で、どれほど働いても残業代は払われず、給与が変わらない「定額働かせ放題」の状況にあります。
日本の教師の多くが長時間の時間外労働を行っていることは、今や有名です。中学校では半数、小学校でも3分の1の教師が過労死ライン超えの時間外労働を行っています。それだけ長く働こうが、給与は全く変わらないのです。
制度上、現実的に行われている時間外労働は、ないことになっています。労務上「自発的行為」、つまり、学校が必要とする業務ではなく「教師が勝手にやったこと」として処理されているのです。
増えていく仕事のことや、受け持っている子どもたちのことを考えると、教師は定時になったからといってさっさと帰るというわけにはいきません。ですが、いくら学校に残って残業していても、労務上・給与上は「なかったこと」になってしまうわけです。これでは、タイムカードで勤務時間を計測しても意味がない、と考えてしまうのも当然です。