象徴的なのは「クリーンコール」という言葉

【小泉】テーマにしたくないんですよ。象徴的なのは「クリーンコール」という言葉。きれいな石炭という意味で、たとえば「あの石炭火力は煙が出てないからクリーンコールだ」と言うんです。でもね、この言葉は日本でしか通用しません。だって、黒い煙は出てないけど、CO2は出てますから。

【田原】どうやって現実を変える?

【小泉】いま自治体や企業の後押しをやっています。50年の脱炭素化を宣言した自治体は、私が大臣になったときは4つだけ、いまは33です。人口規模で言うと4900万人で、20年中にはこれを6500万人までに持っていく。そうすると人口の過半数がそっちだから、現実が変わるじゃないですか。そこをね、環境省の大臣として正門からドアを叩いて開かないのなら、裏門だって、壁を飛び越えたって、あるいは土を掘って地中からだって、中に入るためには、なんだってやるぞと。そういうアプローチを、いまやっています。

【田原】民間はどうですか。

【小泉】TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の賛同企業数は212社で、日本がぶっちぎりで世界1位です。SBT(パリ協定の目標と整合した目標を設定した企業への認定制度)は、アメリカより1社少ない58社で世界2位。もう1つ、RE100(事業に使う電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指すイニシアチブ)は、たとえばすでにアップルが達成していますが、いま日本は世界3位。もちろんいずれもアジアでは1位です。

いま国内ではこれだけ受け止めが広がっています。背景の1つは、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資。ESG投資は、いま日本で市場規模が4倍になった。環境省もESGファイナンスアワードを立ち上げて、20年2月に大臣表彰もやる。ESGのアワードは政府として初めてです。このように、気候変動に対して前向きに取り組む企業が、資金を集めやすい環境を整えていく。まさにいま政府が言っている環境と成長の好循環をやっていきます。

【田原】肝心の経産省はどうですか。経産省は、俺たちが中心だと思い込んでる。これをどう巻き込むか。

【小泉】考え方がぶつかるところもある一方で、協力しないとやっていけないところもあるわけですから、両方だと思ってます。実際にCOP25では、経産省も交渉団のチームの中に入って本当によくやってくれましたよ。そこは本当に前向きにいい雰囲気でできました。イノベーションがないと、脱炭素社会は実現しないですから、ここはしっかりと一緒にできることはやっていきたいなと。