再年調ができなければ確定申告をすることになる

アルバイト先から渡されるのが「給与所得の源泉徴収票」なら雇用契約、「支払調書」であれば業務委託だ。アルバイト先によっては、「源泉徴収票」や「支払調書」を発行しないところがあるかもしれないが、その場合は発行を請求するように子どもに伝えるのがよいだろう。

企業によっては、年末調整のやり直しを渋るかもしれない。その場合は、確定申告をすることで扶養家族の数を減らし、追加の税金を納めることができる。

通常の年であれば3月15日が期限だが、今年は土日の関係で3月16日(月)となっている。

3月16日を過ぎてもそのまま放っておくとどうなるのか。所轄の税務署では、「事後処理」という仕事がある。

「事後処理」とは、給与所得者が、扶養家族と申請していた人に基準を超える所得があった場合や、長年掛けていた生命保険が満期になったが申告をするのを忘れていた場合などに、追加の税金を納めるように促す事務をいう。

筆者も国税に在職中、「事後処理」という業務に携わったことがある。呼び出しのはがきを手に税務署に来る人は、いったい何がいけなかったのだろうという顔をしていることがあった。

FXで大もうけして所得税を納めることになったご老人は、「家に来てFXをやるといいと教えてくれた人は、税金がかかるなんて一言も言ってなかったのに……」と言っていた。

生命保険が満期になったことで呼びだしはがきを受け取った老婦人が、「そんなこと担当の人から聞いてない」の一点張りで、らちが明かないということもあった。

国税は「税法は周知の事実」としているが実際はどうか

「事後処理」は、資料があって必ず追加の税金がとれる仕事なので、調査官の間では地味な仕事だと思われている。確かに1件当たりの追加の税額としては少ないが、件数は多いので、合計するとそこそこの税収になる。だから「事後処理」は地味ながらも重要な仕事なのだ。

国税当局は、税法は周知の事実で、知らない方が悪いというスタンスで仕事をしているというきらいがある。

法律をきちんと守って納税をしている人がいる限り、ルールを守っていない人がペナルティーとなるのは当然だ。

ペナルティーについては、国税庁のHPに明記されている。

期限に遅れて申告する「期限後申告」をすると、「無申告加算税」が課されてしまう。その金額は、原則として、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%だ。

ここで、B君が業務委託の家庭教師をしているにもかかわらず、お父さんは扶養家族として申請し、後日税務署から連絡を受けて期限後申告をした場合の所得税をざっと計算してみよう。B君が仕事で使った経費は0円とする。

86万4000円-38万円(基礎控除)=48万4000円
48万4000円×5%(所得税率)=2万4200円
ここに、復興特別所得税という税金もかかるので、2万4200円×2.1%=508.2円。
100円未満は切り捨てなので、500円。

それらを合算すると、B君が納めるべき所得税の金額は、2万4700円となる。

税務署からの通知を受けてから確定申告をしたことになるので、無申告加算税の計算も必要だ。

加算税の基礎になる本税の端数処理は1万円未満は切り捨てなので、

2万円×15%=3000円

ただし、加算税は5000円未満であれば切り捨てになるので、B君には無申告加算税はかからない。

B君を扶養親族としているお父さんは、課税所得が330万円を超え695万円以下だった場合

63万円(特定扶養親族の控除額)×20%=12万6千円

追加で納める所得税は、12万6千円。ちなみにこの場合に復興特別所得税は考慮しなくてよい。

無申告加算税は、

12万円×15%=1万8千円

となり、追加の所得税と無申告加算税、合わせて14万4千円を納税しなければならない。

交通ルールで考えると、幼いころから信号の赤は止まれ、青はすすめと教えられてきた。だから誰でも知っている。

翻って、税法はどうだろうか。

筆者は、所属している税理士会の支部の租税教育推進委員を務めていたことがある。支部がある地区の学校や母校に出向き、租税教育の授業の講師をするのだ。小学生や中学生には、「子どもでも税金の恩恵を受けているから、大人になったらきちんと納税しましょうね」などという内容を講義する。

高校生になると、グループで必要だと思う税金と必要でないと思う税金について話し合い、全体で共有するという授業になる。ある高校では、実際に確定申告書の書き方を生徒に体験させたいという要望から、一人一人に確定申告書を作成してもらうという授業を行ったこともある。