突撃! 100歳宅の晩御飯

しかし、3年ほど働くと胃を悪くして沖縄の家に返されてくる。だが、戻ってきてからもよその家の畑仕事や子守をさせられていたという。俗に言う「口減らし」で、ノブさんの母親が前金を受け取る代わりに、ノブさんは他人の家で働き、そこで賄いを食べさせてもらっていた。そういったことは社会全体でよくある時代だったという。

ノブさんに何歳まで生きたいかを問うと「130歳。ごちそうをいっぱい食べたいから」と元気よく答えた。訪問した時間は夕飯どき。この日の献立は、刻んだテビチ(豚足)入りの沖縄そば、さつま芋の葉と鮭を混ぜた麦飯、黄金芋という村内産のさつま芋とゴーヤの天ぷら、沖縄産のマグロと鯛の刺身、もずくをりんご酢とすりおろしたりんごであえたもの。100歳のおばあちゃんの食事にしては多いのではないかと思ったが、ノブさんは全部たいらげるという。

しかも、自分で箸を使って口に入れ、歯でしっかりと噛むというから驚きだ。ノブさんは、沖縄そばさえも箸を使いこなしてちゅるちゅるとすすっていた。「そばの中のテビチがおいしい」とご満悦。

ヤス子さんは筆者にもノブさんと同じ食事をふるまってくれた。まず黄金芋の天ぷらを口に入れると、優しい甘みが広がった。高齢者が食べるいわゆる「介護食」ではなく、私が普段食べているような料理と同じだ。麦飯のまぜご飯も出汁がきいていて絶品。あまりの美味しさに、「食べることが生きがい」と言うノブさんの気持ちもわかった。

ヤス子さんの話を聞くために箸を動かす手を止めると、そのたびにすぐにノブさんから「食べて」と声がかかる。「沖縄の人は、人に『食べて、食べて』と勧めるのが好きなんです。方言で『かめーかめー攻撃』というんですけどね。お母さんも小さいころ食糧難の中で育ったからこそ、人に『もっと食べなさい』と勧めるし、自分も食べるのが大好きなんだと思いますよ」とヤス子さんは言った。

友達とのお喋りや美味しい食事など、暮らしの中のささやかな喜びを心から楽しんでいるノブさん。そのまっすぐな目から、健康で長生きする喜びを教えてもらった。

(撮影=万亀すぱえ)
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