「私も、何でかねという感じです。長寿の要因はこれだ、と確定はできかねるのかなと思っています」
新垣村長はインタビューの開口一番、そう首を傾げると、村としての取り組みを説明してくれた。
「北中城村では食事、運動、地域のコミュニティで村民の健康をサポートしています。特に顕著なのは、地域コミュニティの充実ぶりでしょう。そんな中でも(高齢者同士の)コミュニケーションは自治会の中でうまい具合にやっていますね。14の自治会が活動し、公民館でラジオ体操や認知症予防の運動などのサークル活動が盛んに行われています」
地域の交流が活発なことで顔なじみがたくさんできる。村ではお茶と黒砂糖を楽しみながら井戸端会議をする光景が至る所で見受けられる。
新垣村長は「おしゃべりが盛んなので自然と笑う機会が多い。そのおかげか『主観的幸福感』の高い高齢者の割合が、全国平均では44%なのに対し北中城村では52%というデータもあります」と続ける。近藤教授も「興味深いことに、笑いと健康は関連性があるのです。男性の場合、ほとんど笑わないと答えた人は、ほぼ毎日笑うと答えた人より1.5倍不健康感が高いというデータがあります」と指摘する。
ちなみに新垣村長の母も100歳を超えているそうだ。
よく笑い、幸福感が高いという北中城村の女性は、どのような暮らしをしているのか。新垣村長に会ったあと、2019年6月に100歳を迎えた比嘉ノブさんの自宅を訪ねた。
食べないと「学校」行けない!
筆者を一目見るなりとびきりの笑顔と握手で迎えてくれたノブさん。その手にはたくさんのシワが刻まれていたが、驚くほどすべすべだ。耳は少し遠いようだが、声は大きく喋り方も溌剌としている。2年前に転んで以来車いすでの生活だが、それまでは自分の足で歩いていたそうだ。
ノブさんは娘のヤス子さんと二人暮らし。家の至る所に100歳のお祝いの飾りつけや、カジマヤー祝い(沖縄の97歳の長寿祝い)のときの写真が置かれている。基地問題では対立する安倍晋三総理と玉城デニー沖縄県知事の両人からもらった100歳祝いの表彰状も並べて飾られる。
沖縄長寿の背景を学術的に論考した『ソーシャル・キャピタルと地域の力~沖縄から考える健康と長寿』(イチロー・カワチ、等々力英美編著)でも、祝いごとなどお年寄りを敬うコミュニティが生きがいをもたらすとも考察されている。
朝5~6時には起きるというノブさん。朝ごはんはパンが基本で、ヤス子さんが作るフレンチトーストやサンドイッチなどを食べ、リンゴやバナナをペーストにして牛乳と混ぜたものも欠かさず飲む。