「長くやっていれば紆余曲折は当たり前」
このような唯一無二の強みをさらに際立たせていくには、中途半端なテスト施策や、禁煙スペースに煙が漂ってくるような「名ばかり禁煙」ではなく、「全席禁煙」を進めていくしかない。それを「串カツ田中」のFCオーナーも実体験から理解し、賛同してくれているというのだ。
もちろん、中には「禁煙で売り上げが下がったらどうするんだ」と食い下がるオーナーもいたという。だが最終的には、「自分たちは何も変わらないで売り上げを出し続けられるなんて、そんな甘いものではないですよ」という貫社長の言葉に納得してくれたという。
「箱物ビジネスですから、既存店売上が毎年100%を超えていくなんてことは物理的に考えても無理なんですよ。どんな好調でもどこかで必ず調整に入りますし、長くやっていれば紆余曲折するのが当たり前。それを長期的にみてどうにか成長させていくには、なんらかの強い意志をもって戦略を進めていくしかない。今残っているチェーンというのは、それを貫くことができたところばかりだと思いますよ」
2018年はたまたま実力以上の結果が出ただけ
そう考えている貫社長からすれば、最近報じられる「苦境」も織り込み済みである。2018年から2019年にかけての「串カツ田中」を取り巻く状況を、以下のような冷静に振り返った。
「2018年はテレビに予想以上に取り上げられたおかげでたまたま実力以上の結果が出ただけで、前年比100%割れというのが今のわれわれの実力です。喫煙率は30%をきって今後も喫煙者はどんどん減っていく。そうした計算上、禁煙の飲食店はうまくいくはずですが、酔客の多い酒場では普通にやっても失敗するのはわかりきっていた。ですから、業界で一番最初に『全店禁煙』宣言をするという戦略を選んだ。あれは一番じゃなければ意味がなかった。実際、私たちの後で続いた居酒屋はことごとく失敗してます」
「全店禁煙」というニュースを仕掛けて、メディアの話題をさらうことで、喫煙客離れの穴埋めをしていく。2018年はその狙いが見事に的中したものの、2019年はその効果が薄れていったというのである。