FCオーナーから「やめたい」の声はない

「そもそも、うちのフランチャイズをやりたい方は、『串カツ田中=禁煙』ということを最初からわかったうえでやってくる。既存のFCオーナーの場合も、禁煙にかじを切ったのは10年後、20年後に『串カツ田中』を残していくための長期的な戦略だと理解してくださっているので、禁煙をやめたいという声はありません」

「串カツ田中」が全店禁煙に踏み切ったのは、客や従業員を受動喫煙の害から守るということより、ファミリー層の取り込みという事業戦略によるところが大きい。そう聞くと、「居酒屋チェーンなのに、なぜ酒をガンガンおかわりしない人々に執着するのか」と首をかしげる方も多いだろうが、貫社長によれば、「未来への投資」だという。

「ファミリー層を大事にしているというよりも、お父さん、お母さんと来るお子さんが大人になるのを待っている、と言ったほうが正しい。マクドナルドが典型的ですが、人は自分が小さい時に食べた味に、親になって子供と一緒に戻ってくる。このような流れは、巨大飲食チェーンに成長するためには絶対に必要だと思っています」

長期戦略としてのファミリー層取り込み

実際、創業から10年以上を経た「串カツ田中」には徐々にその兆候が見え始めている。2008年にオープンした東京・世田谷の1号店で、貫社長自身がオープン当時接客した家族連れの中にいた小学生が、大人になって最近来店してくれたというのだ。

巨大チェーンへ成長するにはファミリー層の取り込みは不可欠。ファミリー層の支持を得るには、マクドナルドのように「全席禁煙」を進めていくしかない――。そんな貫社長の長期戦略をFCオーナーを支持するのは、信頼関係もあるが、何よりも「串カツ田中」の強みを身をもって感じていることが大きい。

「オーナーからよく言われるのは、禁煙をやる前からどういうわけか家族連れが多くやってきているということ。大衆酒場なのにファミリー層が取れているのは、恐らくうちだけじゃないでしょうか」