同期の新居は「庭付きの注文住宅」で、わが家に比べ……

築5年の中古マンション(物件価格4000万円)を購入した田村祥太さん・亜子さん夫婦(ともに32歳)。2人は毎月約12万円の住宅ローンを66歳まで返済しなければならないが、念願のマイホームを購入できた亜子さんは、当初は幸福感いっぱいだった。

祥太さんも、物件選びなど購入までの道のりは大変だったが、これまで住んでいた賃貸よりも広くて、設備が良い分譲マンションに満足していた。何より、「自分の城」を持てたことで、社会人として一人前になれたようで誇らしかった。仕事に対するモチベーションもあがった。

会社の同僚や友人たちを招いて新居のお披露目パーティーをした際には、Aさん夫婦もお祝いを持って来てくれた。Aさん夫婦の家は、注文住宅なので、出来上がるまでに時間がかかるらしく、新居への引っ越しは田村さん夫婦のほうが早かった。

Aさんの妻は「やっと出来上がって、もうすぐ入居できそうなんです」と言いながら、亜子さんと、最新家電や家具、インテリアショップなどの情報を交換し合って、盛り上がっていた。

インテリア雑誌に掲載されてもおかしくなさそうな

亜子さんの様子が変わり始めたのは、Aさん夫婦の新築パーティーに呼ばれてからだ。

Aさん宅は、最寄り駅からやや離れているものの、ゆったりとした庭付き一戸建てで、さすが注文住宅といった感じの凝った外装は、一目で周囲の家との違いがわかる。

写真=iStock.com/recep-bg
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内装やインテリアも「とにかく、建築士さんがこだわる人で……」とAさん夫婦は苦笑まじりに言っていたが、素人目にもセンスがよく、そのままインテリア雑誌に掲載されてもおかしくなさそうだ。

祥太さんは、自分たちの中古マンションと比べても仕方ないと、頭ではわかっているものの、気持ちは何となく沈んでいったという。亜子さんの様子をそっとうかがうと、時折、顔が能面のように無表情になっている。内心穏やかではないことだけは分かる。

田村さん夫婦とAさん夫婦の違いは、購入物件だけではなかった。