韓国の賃金水準:大企業「100」中小企業「60」

調査では「労働条件に不満足」が51.0%と最も多い。ちなみに最初の仕事の平均賃金は100万~150万ウォン(約10万~15万円)が37.5%、150万~200万ウォン未満が29.6%と、低賃金の仕事が67.1%を占めている。

韓国労働研究院(KLI)のリポートによると「韓国の青年雇用問題の核心は、大卒以上の高学歴青年の就職難にあり、中小企業への就職忌避など人材需給ミスマッチに起因する就職難の割合が高い」と指摘している。

韓国の大学進学率は約75%と日本の50%超と比べて高いが、大卒に見合う処遇を得られないことも離職の一因だ。また、韓国の若者が決して転職志向が強いわけではない。

若者(18~24歳)に転職に対する考え方を聞いた内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2014年)では「つらくても転職せず、一生一つの職場で働き続けるべき」と答えた割合は、日本は4.8%、韓国も4.5%と低いが、「できるだけ転職せずに同じ職場で働きたい」は、日本は31.5%だが、韓国は43.7%と高い。アメリカの28.0%、イギリスの22.4%、ドイツの15.3%よりも突出して高い。

韓国人も本当はひとつの会社でずっと働きたい

つまり、韓国の若者は諸外国と比べて転職志向が弱く、むしろ思いとしては日本と並んで終身雇用との親和性が高いといえるだろう。

にもかかわらずなぜ若者の転職者が多いのか。KLIはこう分析している。

「これは労働市場の二重構造の深化により、内部労働市場と外部労働市場の労働条件格差が解消されていないためである。韓国の青年が大企業や公共企業の雇用に引き寄せられる現実を見ると、労働市場の格差を解消することなしに、青年の雇用状況を改善することは難しい」

「二重構造の深化」とは、大企業と中小企業の賃金格差の拡大のことを言っている。韓国の大卒者はサムスン、LG、現代などの財閥系の大企業への就職を目指して就活するが、極めて狭き門となっており、その多くは中小企業に就職せざるをえない。

しかし、前述したように大企業との賃金格差に愕然がくぜんとし、早期に離職して少しでも給与が高いところを目指すということだろう。

写真=AFP/時事通信フォト
給与格差にあえぎ転職地獄に陥っている韓国国民を文在寅大統領はどう見ているのか

実際に大企業の賃金水準を100とした場合、1993年の中小企業は82と、格差は小さかったが、年々拡大。2016年には60にまで低下している(韓国雇用労働部)。

韓国の若者にすれば「受験競争をがんばってせっかく大学まで出たのに賃金の安い中小企業で働かなければいけないのか」という思いが転職に駆り立てているのだろう。