1997年の通貨危機以降、年功賃金→年俸制・成果主義の賃金制度へ

そしてもうひとつ、冒頭のグラフで目立ったのは勤続年数10年以上が日本は44%以上であるのに対し、韓国は21%と諸外国に比べても極端に低いことである。その背景にある最大の問題は、年功賃金と終身雇用という雇用システムの衰退であろう。

1997年の通貨危機以降、生き残りの危機にさらされた韓国の企業は従来の年功賃金から年俸制や成果主義の賃金制度に急速に変わり、その流れは現在も続いている。

年齢に関係なく成果・実績主義で昇進・昇給が決まり、ボーナスも従来のような基本給比例ではなく、個人の成果評価に基づいて支給する方式に変わった。

その典型はサムスングループだ。

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サムスン電子は98年に年俸制を中心とする成果主義に移行した。評価しだいで社員間で大きな給与格差が生じる仕組みだ。

マネージャー(課長)は担当領域の業績、GMは部門の業績を厳しく査定され、結果を出さなければ降格もされる厳しい制度である。年功賃金から成果主義に移行した最大の理由は外部からの優秀な人材の確保と流出の歯止めである。

サムスンでは“45歳定年”が慣行になっている

成果を出さなければポストも剥奪される。その結果、出世レースから脱落する社員も多く、先の昇進が期待できない45歳の部長クラスが退職するという“45歳定年”が慣行になっている。

成果・実力主義の評価が強化されると、当然、評価が低い社員は居場所を失い、会社を去っていく。長年続いてきた終身雇用慣行も年功賃金の崩壊と連動して衰退していくことになる。サムスンだけではない。多くの企業の成果主義の導入が早期離職者を促しているといえるだろう。

筆者は6年ほど前に韓国のサムスン電子を取材したが、研究・開発者はアメリカなど韓国以外の外国人人材が多くいることに驚いた。世界中から一流の人材を募集しており、韓国人であっても基準をクリアしなければ採用は難しいという話も聞いた。