「長女を診てもらった後、すぐ診断書を書いてもらえますか?」

母親は椅子に座ったまま身を乗り出しました。「長女を診てもらった後、すぐに診断書を書いてもらえるのでしょうか?」

医師は困ったような表情をして、しばらく考え込んでいました。そこで筆者は母親に説明をしました。

「できるだけ早く障害年金が再開する手続きをしたい、というお気持ちもわかりますが、すぐに診断書を作成してもらうのはちょっと厳しいかもしれません。ご長女が何度か通院し、治療の経過を見た後で作成する必要があると思われるからです。なので、それは受け入れてもらうしかないかと……」

医師も同意しました。

「そうですね。できれば時間をかけてその後の様子をみさせてほしいです。その上で診断書を作成させてください」

黙って聞いている母親に、筆者は念を押しました。

「前にもお伝えしましたが、障害年金が再開されるように本来の症状よりも重めにした診断書を書いてもらうことはできません。ご長女のありのままの状態を先生に判断していただき、診断書を作成してもらうことになります。なので、必ずしも障害年金が再開されるというわけではありません。それでも先生を責めないでくださいね」

母親は何かを考えている様子でしばらく目を閉じていましたが、ゆっくり深呼吸をした後で医師と筆者に告げました。

「わかりました。診断書はすぐにできなくても構いません。もう一度先生に診てもらうように長女に伝えてみます」

そう答える母親を見て、医師と筆者はほっとしました。

残念ながら障害年金が再開されないことも多い

家族相談後、母親から長女へ事情を説明してもらい、なんとか長女は通院を再開することができました。

最初の頃は母親と一緒に受診をしていましたが、その後は長女の希望もあり、ひとりで受診するようになったそうです。通院を何度か繰り返したのち、医師には現在の長女の状態に即した診断書を作成してもらいました。

写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

その後、母親や長女の希望もあり、筆者が障害年金の再開の手続きをしました。

手続きから数カ月後。母親から連絡がありました。話のポイントは3つ。

・長女の障害年金は無事再開されたこと。
・医師との信頼関係ができ、通院や治療は続けられていること。
・医師のアドバイスで社会復帰に向けてのプログラム参加を検討していること。

など、母親は長女のその後のことをうれしそうに語ってくれました。それを聞いて筆者も一安心しました。長女のこれからが明るいものになることを願ってやみませんでした。

障害年金に関して今回はうまくいきましたが、もちろんすべてのケースでうまくいくわけではありません。残念ながら障害年金が認められないことも数多くあります。現実はそんなに甘くはありません。それでも可能性がゼロではない限り、行動を起こす価値はあると筆者は考えています。

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