精神科医に対して母親&筆者が“直談判”した
家族相談当日。
母親と筆者は予約時間の10分前に病院を訪れ、待合室で待っていました。室内にはかすかにBGMが流れています。白を基調とした部屋の中心には大きめのテーブルがひとつ。そのテーブルをコの字型に囲うようにして壁際にソファーが3脚、部屋の隅には観葉植物が置かれていました。
ソファーには数人の患者さんが座っています。テーブルの上には雑誌が何冊か置かれていましたが、誰も手を付けようとはせず、下を向いてただ静かに自分の順番が来るのを待っていました。しばらくすると母親の名前が呼ばれたので、母親と筆者は診察室に入って行きました。
出迎えてくれた医師は細身の体形で長めの白衣を羽織っています。表情は硬く、少し神経質そうな印象を受けました。
筆者は内心思いました。
(社会保険労務士が同席するんだから、そりゃ緊張もするよな。何を言われるのか分かったもんじゃないだろうし……)
そこで筆者は事情を説明することにしました。
「私は社会保険労務士ですが、先生に文句を言いに来たわけではありません。その点はご安心ください。本日はお母様からご長女様の状況をお伝えいただき、足りない部分は私からご説明させていただければと思っております」
「再びご長女にお会いできたら、もう少し深く理解できるように……」
事情がわかったためか、医師の表情はいくぶん和らぎました。
「そうなんですね。わかりました。では、まずお母様からお話を伺います」
母親からは長女の当時の事情や現在の状態などをお話ししてもらい、足りない部分は筆者がフォローしていきました。医師は時々ゆっくりとうなずきながら、最後まで話を聞いてくれました。
「突然通院をやめられたので心配していました。そんなことがあったからなんですね。それは申し訳ありませんでした。反省しています。もし、もう一度ご長女にお会いできるようでしたら、今度はもう少し深く理解できるようにしたいと思います」
「それはうれしいお話ですね。ぜひお母様からご長女へ伝えてあげてください」
「はい。長女に伝えてみます。それでですね、先生……」