今まで働き続けられたのは「仕事で成長」「仕事が面白い」から
【3.退職しなかった理由・50代管理職の男女の違い】
同調査では、50代の男性管理職と女性管理職で仕事を現在まで(定年を経験している場合は定年まで)続けている理由にも大きな違いがあることが明らかになっています。
男性管理職では、「家族を養わなければならなかったから」(69.9%)が最も多く、そのほかの理由は3割に満たない状況です。一方、女性管理職は、「経済的に自立したかったから」(46.7%)、が最も多く、「仕事によって自分が成長できたから」(44.2%)、「仕事が面白かったから」(35.0%)と続きます。
男性管理職は、家庭における経済的責任を理由に仕事を続けているのが現状である一方、女性管理職は、経済的な自立や、仕事を通じた自己成長、仕事内容の面白さが、仕事を続けた大きな理由であることがうかがえます。
前出・山谷真名氏はこのように解説します。
「日本では今でも男性は家族を養わなければいけないという意識が強い一方、女性は仕事の面白さややりがいを感じながら働いています。今後、正社員として働き続ける女性が増え、男性が担う経済的責任の重さを減らすことができれば、仕事の面白さややりがいに目を向けて働ける男性も増えるのではないでしょうか」
世の中全体で見れば、結婚・出産・子育てを機に退職する女性のほうが圧倒的に多い時代です。周囲から「辞めてほしい」圧力がかかることも珍しくありません。必ずしも働きやすい環境とは言えない中、彼女たちは「辞表提出」しなかった。その背景にあるのは、上記のような仕事に対する前向きな気持ちだけではありません。
結婚・出産しても辞表提出をしなかったのは「後輩のため」
それは、インタビュー調査で50代女性管理職が残したコメントからもうかがい知ることができます。
<不安でした。女性で一般職から管理職というのは(自分が)初めてだったのですね、会社の中で。なので、自分がつぶれますと、次に続く女性が出なくなるという、そういった思いもものすごくあったんですね>
<転職(すること)は常に(頭の)どこかで考えながら仕事をしているのですけれども、やはり自信がなくて。目の前の仕事が面白いのは面白いのでやっているうちに今日に至るという>
本当は働き続けたかった母親の気持ちに寄り添おうとする女性、また均等法第一世代のトップランナーとして次代にバトンを渡さなければならないという使命や責任感を持つ女性など、仕事を続けるか否かを「自分」だけの問題としてとらえていないのが彼女たちの共通点かもしれません。