社外からのアイデアや技術の提案は年間4000件
P&Gには、このようなイノベーティブな製品をスピーディーに開発するシステムがある。それがコネクト&デベロップだ。これは世界中に存在する優れた技術やアイデアをP&Gの経営資源と結びつけ(コネクト)、イノベーティブな製品開発(デベロップ)を素早く行うシステムである。
同社でこのようなオープン・イノベーション・システムが構築されたのは、00年のことである。当初は、自社の情報収集網を駆使して、見出した外部組織への提携の働きかけという形を取っていた。が、04年からグローバル・ウェブサイトを活用したコネクト&デベロップを開始。ウェブ上で同社が必要としている技術を公開するようにした。これにより、ネット経由で全世界規模でのパートナー探しを行えるようになった。
コネクト&デベロップのバリエーションは非常に多く、単に技術面に限定されない。デバイス面、商標面、生産設備面などで、幅広いアライアンスが行われている。例えば、デバイスに関するイノベーションの代表として、化粧品の有名ブランドSK.IIの「エアータッチファンデーション」という商品がある。この製品の中身はP&Gのオリジナルなのだが、ファンデーションを霧状にして顔だけに塗布できるような特殊なスプレー技術に関しては、オープン・イノベーション・システムを通じて得られたものだ。
また商標に関しては、ベネッセと提携を行い、キャラクターのしまじろうをパンパースに採用している。この取り組みにより、お母さんと赤ちゃんとのコミュニケーションがよくなったという事実があり、P&Gイノベーション合同会社コネクト・アンド・デベロップ マネージャーの波多野哲氏は、「お客様にとっては非常に意味のあるコラボレーションです」と語る。
コネクト&デベロップによる成果は、03年以降に明確に出始め、現在ではコネクト&デベロップによって開発された新製品が半数以上にも上るという。このシステムが有効に機能している証左といえる。
実際、俎上に上ってくる情報の数は夥しく、トータルで年間3000件から4000件にも上る。当然、これらの情報は玉石混交なので、スクリーニングにかけることになる。P&Gでは、大きく3段階のスクリーニングプロセスを取っている。
第1段階は、提案内容が十分に理解できるもので、 P&Gという企業が課題として抱えているテーマと一致するかどうかという点だ。このふるいで、全体の60%がドロップアウトすることになる。
第2段階は、専門の事業部門に対して、提案する価値があるかどうかでふるいにかけられる。具体的には、各事業部で必要としているテーマに沿ったものかどうか、さらに特許や技術データ等によって裏付けがあり、きちんと評価するに足るだけの内容になっているかどうかという点で選別される。
これをクリアしたものが各事業部へ回され、専門性に照らして個別・具体的な評価が行われることになる。これが第3段階目のスクリーニングなのだが、最終的に残るのは、全体の5%から10%程度だという。