研究開発費は抑えて、商品化のスピードを2倍にし、売り上げは毎年4000億円以上伸ばしていく。世界のマーケティング・カンパニーP&Gは、こんな夢のようなことをやってのけた。果たしてどんな方法で実現したのだろうか。

P&Gには臭い嗅ぎのプロがいる

日本人の「香り」に対する意識は昨今、大きく変化してきている。香りを「愉しむ」人々が増えているというのだ。これまで日本では、体であれ、家であれ、無臭ということが重んじられ、臭いのよし悪しにかかわらず余計な香りのついていないことが好ましいとされてきた。

P&Gイノベーション合同会社マーケティング本部マーケティングディレクターの伊藤正明氏によると、P&Gには、世界中の人々の臭いを測定する臭い嗅ぎのプロがいるのだそうだ。その人たちの判定によると、日本人の発散する臭いは、世界で最も低い水準だったという。これはもちろん体質的な理由があるのだろうが、それ以外に、フレグランスやオーデコロンなどで臭いを付けることに抵抗感を抱く人々が多かったことの結果と受け取ることもできる。