ZARAは「モノづくり」からはじまっている

従来の水平分業型から、デジタル技術を活用した垂直統合へ。

アパレル産業のサプライチェーンの変革を先導するのが、島精機のトータル・ファッション・システムである。

一部のファストファッションが失速するなか、好調を続けるZARAも、流通までを含めた垂直統合型のビジネスモデルを採用しているという。本社のあるスペインや近隣国で生産することでリードタイムを短縮し、高いプロパー消化率を保つ戦略は、島さんが思い描いていた“地産地消”のモデルに近い。

島精機の顧客でもあるZARAは、島さんも一目置く存在だ。「あの会社には信念がある」と賛辞を惜しまない。

「ZARAを運営するインディテックスの創業者、オルテガさん(アマンシオ・オルテガ氏)はモノづくりをわかってるからね。あの会社は売るほうではなく、モノづくりからはじまっている。それが、自社で直接生産していないほかのファストファッションにはない強みやと思います」

数回着ただけの服を捨てる消費者たち

もうひとつ、次世代のビジネスモデルとして注目されているのが、オーダーメイド(カスタムメイド)や、“受注生産と大量生産のいいとこどり”であるマス・カスタマイゼーションだ。

アパレルにおけるサステナビリティというと、多くの人がまず頭に思い浮かべるのが、洋服の大量廃棄の問題ではないだろうか。

新品のまま廃棄されるものを減らすためには、過剰な在庫をなくし、つくったものは必ず売れるようにすること、つまり、「オンデマンド型の生産システム」に切り替えることが究極の方策だろう。

また、服が廃棄される原因には、供給する側がつくりすぎていることのほかに、どのブランドの商品も似たり寄ったりで、「どうしてもこの服がほしい!」と、消費者が思うような服が減っていることも大きいと思われる。

捨てられるのは新品の服だけではない。ファストファッションの台頭でトレンドの服が安く手に入るようになったせいか、消費者も「使い捨て」よろしく、まだ十分着られる服を簡単に処分してしまう。

フリマアプリの普及などで、以前よりリサイクルやリユースが一般的になってきたものの、すべての服が再利用されるわけではなく、循環型社会の実現には程遠い。

だが、自分で注文した商品であれば、思い入れや愛着があるため、長く着てもらえる可能性が高い。数回着ただけで捨てる、といったことにはならないはずである。