ユニクロのニットの生産拠点でも導入

“地産地消”で日本の業界を再生させるべく開発した編機だが、発売から四半世紀を経た今も、「日本における普及率は低い」と、島さんは言う。今のところ、売れているのはもっぱら海外なのだ。

「日本製のニットのうち、ホールガーメントは1%くらい。国内では、まだ編機の台数が少ないんです。一方、中国では売れ行きが伸びていて、世界一のニット工場と言われる南旋控股(ナムソン・ホールディングス)の場合、数年前はゼロやったのに、今は800台も入っています」

南旋は、ユニクロのニットの生産拠点にもなっているとか。ホールガーメント編機以外にも、島精機のコンピューター横編機を多数導入している上得意先だ。

ちなみに、ホールガーメント編機を使ったユニクロの「3D KNIT」は、日本の技術で編んでいることを強調しているものの、残念ながら、現状ではメイド・イン・ジャパンではない。香港やベトナムなどアジア各地の工場が製造を担当しているらしく、筆者が愛用している「3D KNIT」も、すべてベトナム製である。

ユニクロ製品を含め、国内に流通する衣料品のうち、国産品は、今や2.4%しかない(数量ベース。2017年、日本繊維輸入組合の統計)。これは、バブルの頃の10分の1程度。国内の繊維産業の状況は、ホールガーメント編機が登場した90年代半ばと比べても、明らかに悪化しているのである。

「誰かがはじめるまで様子見」という会社ばっかり

さらに、ニットの場合、国産の比率は1%以下だとか。

島さんが構想した「ホールガーメント製品の生産で、日本の繊維産業を再生させる」というシナリオが実現する日は来るのだろうか。

「せっかく技術があっても、それにしがみついて、先のことを考えていないんです。今は、変われるチャンスやのに、それをチャンスと思っていない。『誰かがはじめるまで様子見』という会社ばっかりで……。それに日本の場合は、糸の紡績、編み立て、裁断、縫製などと、バラバラに分業してるでしょ。編むところは編むだけ、縫うところは縫うだけ。しかも、間にいちいち商社が入るから、リードタイムがものすごく長くなる。そういうやり方は時代遅れ。これからは一気通貫に行かんとあかん」

瀕死の状態の日本のニット業界に対し、島さんはなかなか手厳しい。