職場でぼーっとする意外なメリット
介護施設で働くKさん。夜勤もこなす彼女は、職場で休めないという悩みを抱えていました。夜勤で一緒になる同僚は「聞こえてないのかなと思うぐらい」コールに出てくれないため、いつも自分が対応しているといいます。
夜勤では決められた休憩時間もあるそうなのですが、雑談している同僚をよそに、Kさんは翌日使う器具の準備に、コールへの対応にと、休めないまま働き通しだといいます。そんな彼女に、私から「率先して動くのをやめて、職場でぼーっとしてみよう」と宿題を出しました(もちろん介護施設の利用者さんに危険のない範囲で、です)。
すると、どうなったでしょう。コールが鳴ると同時に手を伸ばしそうになるのを一瞬だけこらえることで、同僚がコールをとるようになったそうです。「この人、コールとるんだ! と思いました」とKさん。今まで、ピストルが鳴ったと同時に走り出す陸上選手のように、やるべき仕事をキャッチしては率先して動いていたため、同僚の出番がなかったのです。
気づかない同僚をお手本に「やらなきゃ」をゆるめていったKさん。夜勤でも、ソファに座って休憩することができたそうです。率先して動くのをやめても、休憩しても、大丈夫。自分がすべてを背負わなくても、仕事は案外進んでいくのです。
職場の電話、とるかどうか悩んだら…
Kさんの例は介護施設でしたが、「職場で電話が鳴るたびに、とるかどうか悩む」という方もいるのではないでしょうか。
忙しい中、電話をとれば対応に時間をとられてしまう。電話が鳴るたびに「誰かとってくれないか」と願ってみたり、書類作成に忙しいフリをしてみたり。かといって同僚たちの忙しい状況もわかるので、聞こえないフリをしている自分にも罪悪感がわく……。
このような葛藤は、繊細さんを疲弊させます。「周囲への配慮」(みんな忙しそう)と「自分の利益」(でも私も忙しい……)が対立する場面では、さまざまな考えが頭をめぐり、何もしていなくても疲れてしまうのです。
この葛藤疲れを防ぐには、マイルールが有効です。たとえば、電話をとるのは3回に1回だけと決める。鳴るたびにとるかどうか迷うのではなく、「さっきとったから、今回はとらない」「2回スルーしたから、次はとる」とルールに基づき判断するのです。
電話の他にも、「上司に質問したいけどどうしようか」「食器を片付けてから寝るか、翌朝片付けるか」といった、毎回のように生じる悩み、悩む時間がもったいないと思える場面で特に有効です。