ついに本丸である営業部門の改革

変革の実績を残し、社員たちも変化を感じ始めた頃、実力のある若手バイヤーが「古い体質についていけない」と、会社を辞めてしまったことをきっかけについに本丸である営業部門の改革に動き出します。当時、若手の離職が増えていただけでなく、赤字店が目立つのに出店計画が進んでいるといった問題も生じていました。そこで富山氏は、チェーンストア理論を全社で導入するべきだというレポートを提出。営業幹部と対決しながらも、改革を一気に進めます。

そのとき行ったことの1つが、新しいコンセプトや呼び名をつくることでした。これは、制度起業家が成功するポイントの2つ目です。変化を起こす際に「変わった」ことを印象づけるには、ふさわしい名称をつけることが重要。それで周囲が「常識が変わった」と認識するからです。富山氏の場合は、会社の存在意義の呼び方を変えました。それまでのドラッグストアではなく、あらたに自社のことを「地域コネクティッド企業」と再定義。お客様が高頻度で訪れ、自身の悩みを解決できる売り場をもっていることを活用しようと考えたのです。

富山氏はそのコンセプトに合うよう業界・業種を超えて提携やベンチャー企業の買収などを行い、グループを強化しています。AIサービスを開発するベンチャー企業と資本提携を結び、共同でシステムを開発。さらに、北海道という地の利を生かして店舗のテストマーケティングとしての場の提供や、訪日外国人向けのマーケティング支援にまで挑戦しています。北の制度起業家は、業界の枠をも超えようとしているのです。

▼今回のお手本
【サツドラホールディングス】
中核のドラッグストア事業に加え、地域共通ポイントや電子マネー決済サービスを行う「リージョナルマーケティング」、情報端末向けシステムの開発・販売を行う「GRITWORKS」、教育事業を手掛ける「シーラクンス」などを傘下におき、事業を拡大中。
●本社所在地:北海道札幌市北区太平3条1丁目2番18号
●売上高:846.5億円(2019年5月期)
●従業員数:2,801名(2019年5月時点)
(構成=西川敦子)
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