「ヘイトスピーチ解消法」のどこに欠陥があるのか

さらに産経社説は朝日社説を攻撃する。

「平成28年成立のヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法に依拠するつもりなら乱暴な話で説得力はない。同法は、日本以外の出身者やその子孫への不当な差別的言動の解消を目指している。その解消自体は当然としても、同法には日本人を守るべき対象としていない大きな欠陥がある」

ヘイトスピーチ解消法を取り上げることで、朝日社説の反論に予防線を張ったのだ。しかしここまで書くと、自らの社説の欠陥をあらわにしてしまう。産経社説は墓穴を掘ったのである。

ヘイトスピーチ解消法はネットの台頭とともに顕著になってきた、日本以外(特に韓国)の民族に対する差別・攻撃的発言を規制対象にしている。それは決して欠陥などではない。どうして産経社説は「欠陥だ」と言い切れるのか。説明が足りないし、我田引水である。

「朝日への攻撃」ありきで、企画展を取り上げたのか

最後に産経社説はこう主張する。

「そもそも法律以前の話でもある。左右どちらの陣営であれ、誰が対象であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。この当然の常識をわきまえず、天皇や日本人へのヘイト行為を認める二重基準は認められない」

「ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない」。まさにその通りだ。

だが、今回の企画展は、本当に表現の自由を問うものなのか、それとも単なるヘイト表現なのか。その点についてはさまざまな意見を取材したうえで、論じる必要がある。産経社説はそうした取材に基づいているのだろうか。沙鴎一歩には、朝日社説への攻撃がまず先にあり、その攻撃のための材料として企画展を取り上げたように思えてならない。

それではなぜ産経は朝日を攻撃するのだろうか。答えは簡単だ。今回の産経社説を書いた論説委員は朝日の主張が嫌いなのだ。産経新聞社の論説委員室には自分と違う考え方に耳を傾けようとする寛容さが欠けている。