お金にならないものこそ全力でやる

日本テレビの栗原甚氏
撮影=小野田 陽一
日本テレビの栗原甚氏

【栗原】僕は人を驚かせることが好きで、贈り物や差し入れにも凝るほうだけど、相手が怒るようなサプライズはやらないなあ。先日、この業界で一緒に長くやってきた相棒が50歳になったから、サプライズパーティーをやりました。60歳の還暦祝いだと、お疲れさま感があるでしょ。僕らはまだ現役だから、50歳がいいなと。そこで相当に手の込んだことをやったけど、彼は涙流して喜んでくれた。

【箕輪】どんなお祝いをしたんですか?

【栗原】関係者からお祝いコメントをもらってきただけですよ。ただ、とことんやりました。彼は再婚なんだけど、元嫁や息子のところまで行って撮ってきたからね。息子さんはたまたま幻冬舎で。そのことだけは聞いていたから、代表電話にかけて取り次いでもらい、「お父さんと会ってないよね。ちょっとサプライズしたいんだけど」と交渉。会議室を押さえてもらって撮影してきました。他にも出身地の秋田県まで行って、「あいつ今何してる?」のノリで同級生や初恋の女性からコメントを取ってきたり、秋田県から引っ越していたお母さんを追って埼玉県の実家まで行ったり、AD時代お世話になった恩人を探して会ってきたり……。

【箕輪】それはすごい。元嫁が出てきたら怒る人もいると思うけど、そこまで時間とコストをかけてやってくれていたら納得ですよね。

【栗原】テレビ番組として成立するくらいのクオリティでしたね。本人は喜んでくれたし、会の出席者がいろんなところで話してくれて、「なんか、また面白いことやったらしいね!」と業界内でうわさになった。狙ってやったわけじゃないけど、なんでも全力投球でやると、たまにいいことがある(笑)。

【箕輪】お金にならないものこそ全力でやると、レバレッジがかかるというか、噂になってあとで自分に倍になって返ってきますよね。まさにそれが“信用を貯金する”ことなんだと思います。

サラリーマンを辞めたら犯罪者かアル中に

箕輪厚介氏プロデュースの「ミノサン」
撮影=小野田 陽一
箕輪厚介氏プロデュースの「ミノサン」。「ギョサン」と同じメーカー製で、丈夫で滑りにくい。写真は箕輪編集室メンバー還暦祭限定モデルの赤。そのほか、青・白・黒(税込100円)・黄(税込13万円)がある

【栗原】箕輪君くらい信用があれば独立してもやっていけるけど、会社を辞めるつもりはないの?

【箕輪】会社は2週間に1回くらいしか行っていません。パソコンを使わなさすぎたらログインできなくなっていて、行ってもやることがないんです。たまに脅迫の電話がかかってきたり、変な人が来たりもするので(笑)。

【栗原】経費とか、どうしてるの?

【箕輪】ぜんぜん精算してないですね。読者イベントとかやると、30万円くらいかかるんです。あと本の宣伝物やツイッター広告も自腹でやっているので、月給だとよく赤字になってます。

でも、いいんです。僕にとって幻冬舎で本をつくるのは仕入れのようなもの。いまオンラインサロンを開いたりテレビのコメンテーターをやってますが、そこで話すネタがあるのは、編集者として面白い著者と出会っているからです。そこはむしろ自分がお金を払ってでもやりたいことなので、経費精算はあまり気にしませんね。

【栗原】でも、面白い人と会うことはフリーでもできるよ?

【箕輪】きちんとした人はできるでしょうね。ただ、僕は会社員という制約がないと頑張れない。本をつくるのって面倒なんですよ。だからフリーになったら年に1冊くらいお茶を濁してつくって、あとはイベントやったり講演会でごまかしながらやっていくようになるんじゃないかと。2、3年はそれでやっていけても、やっぱりコアのところがないとダメ。そのうち弾切れになって、犯罪者になるかアル中になるのが目に見えてます(笑)。