つくり手の熱は透けて見える
【栗原】企画がつまらないわけじゃないんだよね?
【箕輪】企画は、いかにも売れそうなんです。でも、ダメですね。それは当事者が不在だから。どんなにマイナーな企画でスタッフのレベルが低くても、熱狂してる奴がたった一人でもいれば、その企画は最終的に熱のこもったものになります。でも、座組がキレイなプロジェクトは、熱を持った人がいない。それが受け手に透けて見えてしまう。
【栗原】別の言い方をすれば、最終的に俺がケツを持つよという人がいないとダメだよね。スベってもいいから熱を持ってやれという人が上にいないと、下は本気でやれない。
【箕輪】そもそも、いかにも売れそうという企画も良くないです。たとえば『ざんねんないきもの事典』がヒットしたら、各社、『ざんねんな~』とか『~辞典』とか追随するじゃないですか。『ざんねんないきもの事典』がヒットしたのは、コンセプトが新しかったのと、やはり当事者だけが苦労の末にたどり着いた何かが込められているから。それ抜きにガワだけマネをしたら、むしろ伝わるものは正反対になってしまう。二番煎じでヒットすればまだ救いがあるけど、それでスベッたら一番ダサいです。
テレビ新世紀「問われるのは準備力」
【栗原】箕輪君はテレビマンだったらどんな番組をつくりたい?
【箕輪】好きなのは、「¥マネーの虎」「働くおっさん劇場」「水曜日のダウンタウン」。共通点は、男子校で男子たちが熱狂するノリかな。自分がやるのも、ちょっと内輪ノリで、クスクス笑う感じのものがいいですね。
【栗原】いまそういう番組は少ないけど、テレビ業界に2個か3個はあったほうがいいね。みんな同じ番組ばかりじゃつまらないから。
【箕輪】ただ、テレビは難しそうです。本は基本的に著者と編集者で決められますが、テレビは関わる人が多いじゃないですか。それに企画だけじゃなく、視聴率などの数字、出演者のメリットとか、考える要素がむちゃくちゃ多い。妥協しそうな要素がたくさんある中で、ゴールデンでエッジを立たせ切ったものをやるのは並大抵のことじゃないと思います。
【栗原】だいたいみんなくじけるからね。ゴツゴツしたもののほうが面白いけど、いろいろ配慮していくうちに結局、角が取れてしまう。だから僕は、いつも出演者と対等のスタンスで望んでます。まず企画ありきで、「もしあなたが乗れないなら、おりてもいいですよ」という覚悟でやってるんです。
【箕輪】感覚としてはあと5年以内に、エッジが立ち切った番組もマネタイズできるようになると思います。インターネットの発達とは何かというと、子供が言いそうなことがあたりまえに近づくこと。たとえば「部屋が空いているんだから泊ればよくない?」がAirbnbで、「使っていない車があるなら乗ればよくない?」がUberですよね。コンテンツも「こんなに熱狂してる人がいるなら儲かってよくない?」で、テレビCM以外のマネタイズの手段があたりまえになる時代が必ずやって来る。そういう時代になったときに試されるのが、エッジを立たせられる企画力と、それをずっと考え続けられる「準備力」なんでしょうね。(続く)