「ハードに頼る洪水対策は限界」は本当なのか
東京新聞(10月14日付)の社説は「鉄道各社は計画運休を決め、レジャー施設やコンビニなども休業を発表。多くの人が先月の台風15号の経験を生かして備えた。それでも、多くの死者・行方不明者が出た」と書く。
この東京社説で気になるのが「それでも」の次の「多くの死者・行方不明者が出た」である。そう思って読み進むと、東京社説は最後にこう書いている。
「山間地で森林が伐採されたり、地形が変わったりすると、雨水を一時的に貯留する能力が低下し、地表を流れるスピードが速くなる。市街地化が進んでいくと、雨水が地下に浸透しにくくなる。防災対策が進む一方で、危険性も増していた」
「昨年も西日本豪雨で二十五河川の堤防が決壊。岡山県では多くの死者を出した」
「気象庁気象研究所によると、西日本豪雨は地球温暖化にともなう気温の上昇と水蒸気量の増加が影響している。スーパー台風は珍しくなくなるかもしれない」
「堤防のかさ上げやダム建設といったハードに頼る洪水対策は限界を迎えている。抜本的に見直す必要がある」
「スーパー台風が珍しくなくなる」というのは分かる。だが、洪水対策のどこを見直せばいいというのか。おそらく「山間部での伐採を計画的に進めるべきだ」と言いたいのだろうが、樹木が育つには何年もかかる。伐採を少なくしたところですぐには効果が出ない。そもそも深層崩壊のような災害は、森林では防げない。その点で、河川の堤防は古くから進められてきた実効性のある洪水対策だ。このタイミングで「ハードに頼る洪水対策は限界を迎えている」とまで言えるのは、なぜなのだろうか。違和感を持った。