「午後8時からの運休を当日正午に公表」では不満多数
今年9月9日に関東地方を急襲し、千葉県を中心に長期の停電や断水の被害をもたらした台風15号でも、JR東日本は在来線全線で計画運休を実施した。
JR東日本は8日午前、台風がどの時間帯にどの進路を進むかを予想した気象庁のデータを参考に検討を開始。その結果、同日の午後4時半には「首都圏の全ての在来線であす9日の始発から午前8時ごろまで運転を見合わせる」と発表した。
前述したようにJR東日本は昨秋の台風24号で初めて計画運休を実施した。そのときは午後8時からの運休を当日正午に公表したため、利用者から不満の声も出た。そのため今年9月9日の大風15号では、前日での発表となったのである。
台風という自然相手の予想には難しさが伴う
ところが、数多くの路線で「9日午前8時ごろ」には運行が再開できず、しかも再開時間は何度も繰り下げられた。再開を見込んで各駅に集まった多くの乗客が長時間待たされ、長蛇の列ができた。
JR東日本は乗客の利便性を考慮して「午前8時ごろ」としていたが、台風の進み具合が予想よりも遅く、利用者から批判されることになった。
予想が外れた場合、「想定外だった」と決まり文句を繰り返しても仕方ない。そのときは素直に謝罪し、次に活かすことが大切である。実際に改善が進めば、利用者からの批判は減っていくはずだ。台風は今後も必ずくる。失敗したら次の台風対策に役立てればいいのである。
「非常時対応の認識の共有が災害に強い社会をつくる」
さて今回の台風19号に対する計画運休はどうだったのか。各紙の社説を読んでいこう。10月14日付の朝日社説は中盤で次のように書く。
「今回の台風は日本に近づいても勢力が衰えず、気象庁は早くから注意を呼びかけていた。12日から13日にかけては、5段階ある警戒レベルのうち最大値5にあたる大雨特別警報を、順次各地に発令した。それでも甚大な被害が出た。人々に危機感がいつ、どれだけ伝わったのか、検証がいるだろう」
そのうえで最後に「一方で、鉄道の計画運休や商業施設の休業、イベントの中止などがあらかじめ発表され、混乱の回避につながった。経験を重ね、非常時の対応について認識を共有していくことが、災害に強い社会をつくる」と指摘する。
台風被害は来年以降も心配されるが、日本の社会は計画運休を受け入れられる成熟した社会に向かっていると思う。