バタ足を知らなければ人生という大海は泳げない

フミコフミオ『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』(KADOKAWA)

例の若手君は、己のイチパーの可能性に賭けて「ボクの考えたビジネス界」へ飛び込んでいった。そして大方の予想通りうまくいかなかった。彼にはバタ足を続ける覚悟がまったくなかった。バタ足をしたことすらなかった。バタ足を知らなければ人生という大海を泳げない。

彼は今、細々と手づくりしたプリントTシャツをフリーマーケットやネットで販売して生計を立てていると風のうわさに聞いた。彼はバタ足の大切さに気が付いただろうか。それともバタ足なしで成功を目指しているお気楽起業マンのままだろうか。

彼のプリントTシャツが売れて、原付バイクを乗り回せるようになったら僕もうれしい。高速道路乗り入れ禁止の原付バイクで一般道を地球1周分4万キロほど走ってみれば、少々理解力の劣る彼でも地道バタ足の意味がわかるんじゃないかな。僕は原付バイクで一般道を這いずり回っている彼をこれからも無責任に見守っていきたい。

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