「ドクターX」の裏テーマは、日本人の新しいワークスタイル
2019年5月、岡田准一主演のドラマ「白い巨塔」(フジテレビ)が放映されたが、主演・田宮二郎版や、唐沢寿明版の視聴率には遠く及ばなかった。令和時代の大学医局には、ドラマのような昭和時代の権威は残っておらず、いまや「医大教授」は巨額の裏金をはたいてまでなるようなうま味のあるポストではない。
令和の研修医は「下っ端」というより「17時に退勤できるお客様」であり、教授に僻地出向を命じられたらサクッと辞めて「日給5万」のフリーターに転じれば一件落着なのだ。
「ドクターX」の裏テーマは、「日本人の新しいワークスタイル」ではないかと思う。「年功序列」「終身雇用」「学閥」のような昭和的働き方に限界を感じつつも、多くの人は「じゃあ、どうすればよいの?」と悩んでいるはずだ。そこで、スキルを武器に自由に生きる主人公や、組織の傘下に属しつつも裏フリーで稼ぐ加治秀樹は、一つの解答例になっているのではないか。
ここ10年、日本の医療界では封建的な医局制度は衰退し、インターネットを活用したフリーランスが一大勢力となって、雇用の流動化やダイバーシティが進みつつある。一方、一般企業でも丸紅や日産自動車の副業解禁、タニタの社員フリーランス制度など、医療界のみならず日本中の職場で働き方が変わりつつある。そうした点からも、このドラマは視聴者を惹きつけると、私は考えている。