人は「アウトプット」するとき頭が良くなる
何を隠そう東京大学は、「自分の意見を作ること」を推奨している大学です。4年前から始まった推薦入試でも、東大の教授は学生に対して「この問題についてあなたの考えを聞かせてください」という問いを何度もぶつけていて、入試問題の中にも「18歳選挙権についてどう思うか」「『人の痛みは誰にもわからない』という言葉についてどう思うか」といった問題が出題され、授業やゼミでも意見をぶつけ合うディスカッションに多くの時間が割かれています。
なぜ東大は自分の意見を作ることを推奨しているのか? 実はこの理由は、文部科学省が2020年入試改革で柱にしている「思考力」「判断力」「表現力」に関連しています。自分の意見を作ろうとすることが、この3つの能力を伸ばし、人間の頭を良くしてくれる行為なのです。
みなさんは、人間が頭が良くなる瞬間がいつかご存じですか?
教育学の研究でわかっていることなのですが、頭が良くなるのは本や新聞を読んだり、授業や講演を聞いたりするインプットの瞬間ではないそうです。
そういう学んだ知識や得た情報を使って、何かをアウトプットする瞬間にこそ、頭が良くなるそうなのです。知識や情報は、それをただ暗記していてはなんの意味もなくて、自分の頭の中で噛み砕いたりそれを使って何かをするときにこそ、頭に残るようになる訳です。
人への説明やノートを取ることも「アウトプット」
アウトプット、というと、問題を解いたり答えを出したりすることを想像する人も多いと思うのですが、ここでいうアウトプットというのは問題を解くことだけではありません。
例えば、誰かに何かを説明する時を思い浮かべてください。自分が知っていること、聞いた話を、自分の言葉に変換して相手に伝える必要がありますよね。その時、自分が納得できていないことや、あまり良くわかっていないことは相手に伝わりにくくなってしまいます。逆に、相手に説明できる状態にしようと思うと、インプットした情報が整理され、自分の中でも深く理解することに繋がります。誰かに何かを説明したり、自分の言葉で言い換えたりするときにこそ、頭が良くなるのです。
また、ノートの取り方も工夫すればアウトプットにすることができます。東大生は先生の話や黒板に書いた板書などをそのまま写す学生は極端に少なく、どの人もみんな自分の頭で考えたことを整理して、授業の内容を言い換えてノートを作っています。人によってはそのノートを他人に積極的に見せて、「わかりにくいポイントがあったら教えてくれ」と言って、自分の理解が不十分なポイントをチェックしていたりします。
ここからわかるように、人間が頭が良くなるのは説明したり言い返したりする「アウトプット」のタイミングなのです。