展示終了の表示がないので、客はウロウロするしかない

まず筆者は「四間道・円頓寺会場」のインフォメーションセンターに行き、まち歩きのマップをもらったが、このマップにはすでに展示が終わった作品についてもそのままになっていた。筆者がそれに気付いたのは。ユザーン「Chilla: 40 Days Drumming」の展示をいくら探しても見つからず、同じように探し回る人がたくさんいたからだ。

インフォメーションに戻って「どこにあるのか?」と聞いたところ、「タブロイド判の公式情報で展示終了の旨を告知している」という説明を受けた。だが12ページもあるタブロイド判をその場で読むのは負担が大きい。観光客がまち歩きマップを頼りにするのは当然だ。そこに案内がないのは不親切ではないか。

Photo: Takeshi Hirabayashi
あいちトリエンナーレ2019の展示風景。葛宇路(グゥ・ユルー)《葛宇路》2017

現場にも展示終了の表示がないので、客は道に迷ったのかとウロウロするしかない。インフォメーションと展示終了の作品は、徒歩で5分ほどの距離にあるのだが、マップを手渡されたときにはなんの案内もなかった。

私は、観光学者の責務として、自分が受けた被害を放置した場合、次に困る人が出そうな場合はたいていその場でクレームを入れる(単に自分が嫌な思いをしたというだけであれば、「商売の参考に」という趣旨で数日後にメールでお知らせすることが多い)。

この件に関しては、私が即座の注文をつけたところ、翌日にはマップに手書きで情報が書き加えられていた。このためスタッフやボランティアにホスピタリティマインドが足りないわけではないのだろう。具体的に客がどこで何に困るのかという点に対する想像と理解が足りないだけなので、事前に観光のプロが入っていればトラブルは防げたはずである。クレームへの対応力はかなり高く、現場の奮闘ぶりを感じた。

イレギュラーなイベントの認知はSNSではあまり有効ではない

また、「表現の不自由展・その後」の展示中止の後、有志アーティストが「サナトリウム」と称する非公式の話し合いの場を円頓寺・四間道界隈に作っているのだが、この情報が公式案内所にはないため、探すのに難儀した。若い人たちはツイッター検索でつながるそうなのだが、Google検索だけでは目当ての情報にたどり着くことは難しい。

地方芸術祭でも、そして地方映画祭でも、その場のノリや雰囲気で、オーソライズされていないイベントが自主的に立ち上がるシーンは何度か目の当たりにした。こうしたゲリラ的なイベントを広く認知させる方法としてSNSはあまり有効ではない。SNSはもともと嗜好の近い人々をつないでいるため、ある日たまたまそこにいる人に対する伝播力が弱いのである。

ここは、円頓寺の風情もあって、昭和の頃に立ち返り、駅の伝言板のようなものにチョークで書いたり、ホワイトボードにポストイットで貼るなど、原始的な情報伝達を試みると、より早く伝えられた可能性がある。