「数」と「数字」の違いを説明できますか?

「数」と「数字」。普段なにげなく使っている2つの言葉だが、違いを説明できるだろうか? そう問われて、きちんと答えられる人は少ないだろう。そもそも、そんな問題にすら出合ったことがない。

双方の違いを普段気にしているのは数学者くらいであろう。これからその答えを説明していくが、実は容易ではない。読者の皆さんは、小学1年生の算数の教科書で最初に習ったのが、「かずとすうじ」だったことを覚えているだろうか。「かずとすうじ」こそ、その後10年以上続く数学学習の入り口なのである。

結論を急ぐことにしよう。数は「概念」であり、数字は「数の象徴(シンボル)」なのである。問題は、私たち人類が小学1年生の算数の教科書の最初「かずとすうじ」に到達するまでの実に長い経緯にある。そのことがさらっと教科書には描かれている。概念やシンボルなどといった大人にしかわからない言葉は、そこには一切登場しない。

図のように犬と牛がいたとして、それをじっと眺めていると、私たちは「犬が2」とか「牛が3」と、頭のなかに数が現れてくる。しかし、数の存在に気づいていなかった時代の人々はそうならなかった。