特に昨今、「ウナギを守る」と標榜しながら寄付を募る組織が多く見られます。寄付などの資金集めは、明確な目的、「ミッション」があって、初めて行うべきものです。

これに対して、「ウナギを守るため」として資金を集めている組織の中には、お金を集めた後になってからどのように使うべきか悩んでいるところが見られます。明確な目的が設定されていないにもかかわらず寄付を集める行為は、「ドナー・オリエンテッド」な行為です。

「ドナー・オリエンテッドな行為」とは、問題の解決ではなく、ドナー(寄付者)の満足感を高めることに重きを置いた行為を指します。その用途について明確なビジョンが存在しないにもかかわらず寄付を集めることは、ウナギを食べたいけれど、食べることに罪悪感を感じている消費者の気持ちを欺く行為であり、悪質なグリーンウォッシュとして、強く批判されるべきです。

「食べて応援したいウナギ」を提供する企業

では逆に、消費者として積極的に選ぶべきウナギとはどのようなものでしょうか。現在では、適法なウナギを入手することすら困難です。このため、より適切なウナギを選ぶための基準となりうるのは、商品を扱う企業や組織の取り組みに「明確なゴールと客観性があるかどうか」です。現時点では持続性も適法性も担保されていないとしても、明確なゴールをもって、客観的な根拠に基づいた取り組みを行っている組織や企業があれば、消費を通じてそれらの取り組みを応援できます。

2018年になってようやく、こうした取り組みが順次公表され始めました。商品の選択によって、消費者がウナギの持続的利用の促進に貢献できる時代が近づきつつあります。以下では、そうした企業による先進的な取り組みを2つ紹介します(*2)

1つ目は、岡山県北部の西粟倉村にあるエーゼロ株式会社による、持続可能なウナギ養殖を目指した取り組みです。エーゼロ株式会社は、「人や自然の本来の価値を引き出し、地域の経済循環を育てていく」ことを掲げるベンチャー企業です。代表の牧大介さんは、森林管理協議会(FSC)の認証を受けた、持続可能な林業に基づく地域おこしを西粟倉村で推進した方々の1人です。ウナギを通じて持続可能な資源利用、地域の循環経済がどのように進められるのか、注目されます。