とはいえ、課題も残されています。イオンが販売しているニホンウナギのうち、そうした「クリーンなニホンウナギ」はごく一部にとどまっています。取り扱い商品の大部分は、依然として違法行為が関わっている可能性の高い、クリーンでないニホンウナギです。2018年の「ウナギ取り扱い方針」にある通り、2023年までに販売するウナギの100%を、シラスウナギの採捕地までトレースできる、クリーンな商品にできるのか、注目されます。

もう1つの課題は、「トレースできる」とする根拠があくまで自社の仕組みに基づいており、第三者機関の検証がなされていないことです。今後、トレースできるクリーンなウナギであることの証明が必要とされるでしょう。さらに、「違法ではない」というだけでなく、ニホンウナギの持続可能な利用の実現に向かって取り組んでいくことも当然、求められます。

インドネシアウナギの資源管理にも挑戦

まだまだ高いハードルが残されているとしても、期限を切ってトレーサビリティを確立するとのコミットメントを発表し、実行に移した小売業者または生活協同組合は、筆者の知る限りこれまで存在しませんでした。大手小売業者がこのように宣言し、実際に結果に結びつけている努力は、賞賛されるべきでしょう。イオンのような努力が小売業界に広がることで、違法行為の横行しているニホンウナギの業界が、変革されていくことが期待されます。

また資源管理についても、イオンは同取り扱い方針で「『インドネシアウナギ』の持続可能性を担保するため『インドネシアウナギ保全プロジェクト』を推進します」としています。

「インドネシアウナギ」とは、ビカーラ種のことです。このビカーラ種を対象として、ウナギでは世界初となるFIP(持続可能な漁業を目指して取り組む漁業改善プロジェクト)をインドネシアで本格的に開始し、シラスウナギ採捕の「MSC(編集部注:海洋管理協議会。天然海産物の持続可能な漁業に関する国際的認証制度を提供)認証」取得を目指すというのです。

シラスウナギの採捕に関してはMSC認証を満たし、養殖業については、将来的には先述のASCの取得を目指しています。MSCやASC認証を取得すれば、国際的な信用を得ている第三者機関によって、持続可能な資源管理が行われていると保証されることになります。