改憲に向けて人事で「貸し」をつくる考え

今、自民党には7つの派閥が存在する。派閥単位で少なくとも数人、多い派閥では10人を超える入閣待望組を抱えている。派閥領袖たちは自派のメンバーを1人でも多く入閣させたい。しかも派内の治安維持を考えると、できれば当選回数が多い順に入閣してもらいたい。だから領袖たちは「派閥順送り」「年功序列」の人事を安倍氏に求める。

安倍氏は昨年、領袖たちの要望をできる限り受け入れて12人を初入閣させた。今回も前回並みか、それを上回る初入閣者が出ることになるだろう。

今の安倍氏の求心力からすると領袖たちの要望を受け入れる必要はないようにみえる。あえて受け入れるのは、反安倍色を鮮明にする石破茂元幹事長率いる石破派以外で総主流派態勢をつくりたいからだ。

安倍氏は10月召集の臨時国会以降、悲願の憲法改正に向けて政府・与党一体となって進んでいきたい。人事では各派に「貸し」をつくっておこうと考えているのだ。だから、さほど重視しない閣僚ポストほど、各派が喜んで忠誠心を示してくれるような人選をしたい。そこに安倍氏は時間を割かざるを得ないのだ。

1人、2人の疑惑追及では政権は揺らがないという自信

もちろん「派閥巡送り」人事を行うことで能力が十分でない議員が入閣することは避けられなくなる。政権がスキャンダルに巻き込まれる心配はある。度重なる問題発言や知識不足で五輪担当相を更迭された桜田義孝氏の例が、その典型だ。しかし、1人、2人の閣僚が疑惑追及されるぐらいでは安倍政権の屋台骨は揺らがないという自信が、今の安倍氏にはあるのだろう。

従って主要閣僚は重鎮たちの「変わらぬ顔」が並び、その他の席には「誰も知らない顔」が座る顔ぶれとなりそうだ。「目玉」候補としては橋本聖子氏、三原じゅん子氏ら女性閣僚ぐらいになるのではないか。