転職や独立の足掛かりにされない工夫を
また、そのような有能な人材がずっとくら寿司に籍を置くのかと言われれば、疑問を抱かざるを得ない。スタートが1000万円だとして、仮に給料に見合った働きを見せたとしても、そこからさらに上がる余地はどれほどあるのだろうか。先ほども述べたが、数年間の社会勉強と小遣い稼ぎを兼ねて働きながら、どこかの時点で見切りをつけて他社や他業界に転職、あるいは独立・起業するということは十分に起こりうる。
最近の若く、優秀な人材は転職や独立を念頭に置いて行動している。そのことをくら寿司は頭に入れておくべきだろう。
とはいえ、今回の「新入社員で1000万円」は、これまでの飲食業界には存在しなかった採用形態であることは間違いない。「海外勤務」ないし「海外事業」を推進するというミッションにおいてそれなりの成果が見られたら、飲食業だけでなく、人材採用難に悩む業界でくら寿司の事例にならうところも出てくることだろう。
日本特有の採用手法である「新卒採用」のパターンが変化していくきっかけにもなるかもしれない。同社は今後、随時内定者を決定していくとしており、業界初の年収1000万円の新入社員をいかに育てていくのか、しばらく注視する必要があるだろう。
※編集部註:初出時、ロイヤルホストとすかいらーくの説明について、誤解を招く表現があり、文章の一部を修正しました。(9月6日14時50分追記)
(構成=衣谷 康)