異色の人材が倒産の危機を救った例も

採用手法や基準を大きく変えると、それまで採用してきた人材とはまったく違う人材が入ってくることになる。こういった「異分子」が入ることは、「化学反応」が生じることにもつながる。

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスは、2010年に金融業出身の菊地唯夫氏を社長として招き、その後、菊地氏の手腕によって倒産の危機を免れた。それまでの外食業界の発想にはない菊地氏の斬新でロジカルな発想が同社に大きな変革をもたらした。

これまで当たり前だと思われていた慣習、カルチャーの中に、チャレンジング精神を持った異分子が入ることによって化学反応が生まれる。

企業文化が変化し、昇華したものと言えるだろう。

会社全体に対しても、「これから変わるんだ」「攻めに出るんだ」というメッセージを伝えることになるだろう。現に、今回の新卒採用で求める人物像は「問題の本質を見抜いて解決策を考える能力を持ち、すぐにでも海外で活躍したいという意欲がある強いメンタルを持った人材」(広報)としている。くら寿司の経営陣は、こうした社員を取り入れることで新たな化学反応が起きることも期待しているのではないか。

高スキル人材を育てるノウハウはあるのか

しかし問題は、そんな優秀な人材を教育、トレーニングするノウハウや人材をくら寿司が持っているのか、ということだ。

ファミリーレストランチェーンの先駆けであるすかいらーくが70年代から大卒生を採用し始めた頃から、追随する外食企業の多くは大卒生の採用を始めた。

しかしながら、これらの企業の中には大卒の人材がほとんどいなかったために、どう育成すれば分からないという事態に陥った。大卒生を採ったのはいいが、大卒生を教育できる人材がいなかった。

それまでと違う採用形態を導入した場合、初期はどうしても混乱が起きる。くら寿司は「今回の採用で入社した新入社員に対しては、経営戦略部を中心とする社内の意思決定を行う部門を回って研修を行い、ゆくゆくは海外の店舗でも働いてもらうことを考えている」(広報)と言うが、もとより優秀な人材を、会社の成長戦略を忠実に実行する幹部に育て上げるような教育システムを準備しているのだろうか。

研修内容についても、外部にアウトソーシングすることを考えているのかは分からないが、幹部候補生の教育問題は今後の懸念材料と言えるだろう。

採用選考に当たっても、海外事業に適任な人材かどうかをどのように判断するのかという不安もある。採用の過程で人物を見極める作業においては、やはり外部の人材コンサルティング会社などの助けを必要とするのではないか。